オンナ万引きGメン日誌

「先輩の引退式があって……」バイク用品を万引きした少年に、店長が“愛ある一喝”を放ったワケ

2022/03/26 16:00
澄江(保安員)

「来たわね」、万引きGメンの前に表れたバイク少年たち

 無論、認知件数が減っているとはいえ、地域によってはゲーム感覚や換金目的の犯行が頻発しており、その対応に苦心する商店は少なくありません。少年万引きは、共犯によるものが多く、逃げ足も速いため、外国人の集団万引き同様、捕まえにくい実態があるのです。彼らによる犯行の成功率を考えれば、その暗数は計り知れず、相当な被害を生み出しているといえるでしょう。

 巡回前に店内外の状況を把握すると、バイク少年たちのたまり場とされる休憩所は、店舗駐車場の一角にありました。店舗との位置関係を言えば、正面出入口の斜向かいにあって、その内部まで店内から監視できる状況です。

「来たわね」

 午後4時を少し過ぎた頃、入口付近を警戒していると、大きな背もたれのついた2台の派手なバイクが店舗前の駐輪場に入ってくるのが見えました。排気音が店内にまで聞こえてくるほど、ひどくうるさいバイクなので、すぐに気づいたのです。ガラス越しに彼らの動向を注視すれば、ヘルメットをミラーにかけて店の中に入ってきたので、気付かれぬように追尾を開始しました。

 一見したところ、18歳くらいでしょうか。パンチパーマはかけておらず、特攻服を着ているわけでもないので、暴走族というよりはいたずらっ子といった雰囲気です。じゃれあいながら店内を闊歩してカー用品売場で足を止めた2人は、それぞれがひとつずつパトライトを手に取って、何やらひそひそと話し始めました。手元がはっきり見える場所に身を潜めて様子を見守れば、箱から中身を取り出して配線状況などを確認しています。それからまもなく、商品本体だけをお腹に隠した少年たちは、空になった箱を棚に戻して売場を離れていきました。

万引き
少年たちに店長の思いは通じるかしら
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