【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

天皇の性教育にも用いられた“セックスマニュアル”? その刺激的な内容とは

2022/08/13 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)
gettyimagesより

「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!

――先日、小室圭さんが3回目のニューヨーク州司法試験に挑戦したときの様子がニュースになりましたね。試験結果が出る10月までは小室さん夫妻だけでなく、皇室全体に大きな注目が集まりそうです。そもそも、どうして皇室の方々はここまで注目を惹きつけてしまうものなのでしょうか?

堀江宏樹氏(以下、堀江) 「天皇家には愛されるための門外不出の秘伝がある」……こんなことを現在でもいう人がいるわけですが、戦国時代末期くらいまでは本当にそういう情報を含む、秘密の医学書があったのは事実なのですよ。

 全30巻にも及ぶ『医心方(いしんぽう)』という書物で、そのうち「房内」の部分は歴代天皇の性教育にも用いられた(らしい)セックスマニュアルです。厳密には「愛される」というより、「セックスで元気になるための秘密のマニュアル」で、天皇家を中心とする宮中にだけ伝わっていた のです。

――天皇家秘伝のセックスマニュアルですか!

堀江 『源氏物語』の完成より100年と少し前、医師の丹波康頼という人が中国から輸入された医学の知識をまとめ、天皇家に献上したのが『医心方』です。「房内」とは「ベッドルームでの知識」くらいに訳せると思うのですが、「正しくセックスすれば万病が治る」みたいな内容になっているんですね。ちなみに丹波康頼は、昭和時代に活躍した俳優の丹波哲郎さんのご先祖にあたります。

――丹波哲郎さん。懐かしいですね。若い読者は知らないかもしれませんが、バブルの頃の日本で大ヒットした『大霊界』シリーズでも知られる……。

堀江 「死んだら驚いた」ってキャッチをつけて、映画シリーズ化までされましたからね。本当は「やったら驚いた」って『医心方』の映画化をやってほしかったですが(笑)。

 歴史に話を戻すと、民間に『医心方』の知識が流出しはじめたのが戦国時代末期の頃。西暦でいえば16世紀末の正親町(おうぎまち)天皇が、自分の側室の病気を治してくれた医師・半井瑞策(なからい・ずいざく)にお礼の気持ちをこめて、『医心方』全巻を贈ったのです。「正しくセックスすれば病も治る」という「房内」の巻の知識は半井家の顧客のセレブリティや、同家の弟子筋・関係者にも流出していきました。

 それまででも『医心方』「房内」への関心は高かったのに、口語訳が出始めたのは、昭和になってからなんですね。戦前の天皇は名実ともに「神」でしたが、戦後、昭和天皇による「人間宣言」が影響したのでしょう。「天皇家の性教育にも用いられたのでは」なんてささやかれる『医心方』「房内」も、恐れ多さより、「どんな中身か知りたい!」という好奇心が勝ってしまい、口語訳されたものが何バージョンも出版されるようになりました。

本当は怖い日本史
日本って、とんでもない性教育の国だったんだな……
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