オンナ万引きGメン日誌

「先輩の引退式があって……」バイク用品を万引きした少年に、店長が“愛ある一喝”を放ったワケ

2022/03/26 16:00
澄江(保安員)
写真ACより

 こんにちは、保安員の澄江です。

 ロシアによるウクライナ侵攻が現実となってしまい、現地の戦況報道を目にするたび、胸が痛み不安な気持ちに襲われます。ロシア軍による大量虐殺は、あまりに冷酷で、理由や背景はどうあれ決して許せるものではありません。

 我が国においても、北方領土や尖閣諸島の領有権をめぐる争いが存在しており、いつミサイルが撃ち込まれても不思議じゃない気持ちになりました。保安員引退後、ひとり静かに余生を過ごすプランを台無しにされてしまえば、自分の人生を否定されるに等しく、被害妄想を膨らませては戦々恐々としています。ウクライナの方々がおかれている現状を思えば、まさにそのような状態に陥れられており、あまりに悲惨でお気持ちを察することすらできません。また、各国による重い経済制裁を受けながら暮らすロシア人の苦しみも相当に深いはずで、一刻も早い停戦を願うばかりです。

 そんな中、日本国内は年度末を迎え、卒業シーズンが到来しました。この季節になると、きまって若い人たちの犯行が増え、その対応に苦慮します。犯罪にも季節感を感じさせるものがあり、時節に沿った警戒が必要なのです。今回は、先輩の卒業を祝うために万引きした人たちのことについて、お話ししたいと思います。

 当日の現場は、東京の外れに位置するホームセンターD。東京都内とは思えぬ、緑豊かな街にある巨大店舗です。ワンフロアの広大な売場には、ネジ1本からペットの生体まで無数の商品が陳列されており、どこで何を盗まれてもおかしくない現場といえるでしょう。この日の勤務は、午前11時から午後9時まで。私鉄とバスを乗り継いで、自宅から1時間半ほどかけて現場事務所に到着すると、どことなくアルコアンドピースの平子さんに似た長身のイケメン店長が出迎えてくれました。

「今日はよろしくお願いします。最近、この辺の暴走族っていうか、若い子のバイク集団が、ウチの休憩所をたまり場にしていて困っているんだよね。万引きしているかはわからないけど、今日も来ると思うからさ、店の中に入ってきたら見てもらえる?」
「承知しました。何時くらいに、どれくらい集まりますか?」
「4~5人の集団なんだけど、いつもバラバラに来ているね。早いときには4時くらいから集まってくるかな」

 万引きは、少年の犯罪。そんなイメージがあるかもしれませんが、ここ数年、少子化の影響もあってか、少年万引きは減少しています。おそらくは、得られる利益と捕まるリスクのバランスが合わなくなってきている部分もあるのでしょう。万引きよりも、ひったくりや特殊詐欺、大麻売買などの犯罪に手を染める者が増えているようです。

万引き
少年たちに店長の思いは通じるかしら
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