代表的駄作を紹介!

マドンナ、マライア、ブリトニー以外にもまだいる「映画に出なければよかった大物歌手」

2017/05/05 19:00
(EXCLUSIVE, Premium Rates Apply) (EXCLUSIVE COVERAGE) Prince performs during his "Welcome 2 Europe" tour at Ahoy on July 10, 2011 in Rotterdam, Netherlands. (Brian Ach/WireImage for NPG Records 2011)
プリンスが他人を演じるということを考えるだけでも無理がある

 毎年12月、映画製作会社の重役が「映画化していない脚本」の中から優秀な脚本を選びリストアップする、「ブラックリスト」が発表される。上位に入った脚本の多くが映画化され、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞を獲得することも少なくないため、非常に注目されているリストだ。

 昨年、その「ブラックリスト」で最も優秀な脚本だとされたのは、先日映画化が発表されたマドンナの伝記映画だった。そのマドンナは、長年映画界に強い憧れを抱いてきた。1996年に公開されたミュージカル映画『エビータ』ではゴールデン・グローブ賞主演女優賞を獲得したが、演技力のみが問われる映画では「演技がわかっていない」と酷評されてきたため、彼女の伝記映画が作られるのは皮肉だ、という声が上がった。

 成功を収めた歌手が、役者を夢見るのはよくある話。マドンナだけでなく、マライア・キャリーの『グリッター きらめきの向こうに』、ブリトニー・スピアーズの『ノット・ア・ガール』など、「映画に出なければよかったのに……」と気の毒がられる歌手は少なくない。今回はそんな「一流歌手の超駄作映画」の中から、選りすぐりの5作を紹介しよう。

■プリンス『グラフィティ・ブリッジ』(1990)

 昨年4月に急死し、世界中にショックを与えたプリンス。唯一無二の音楽センスを持ち、80~90年代前半に「時代の寵児」と持てはやされた彼は、亡くなるまでに3作の映画に主演している。

 1作目は、84年に公開されたロックミュージカル映画『パープル・レイン』。青年が挫折しながらもスーパースターになるまでを描いた自伝的映画であり、迫力ある演奏シーンがカッコいいと大ヒット。アカデミー賞の歌曲/編曲賞を獲得した。評論家の中には、「プリンスのファンでなければ拷問のような作品」「演奏シーンは素晴らしいが、演技が下手すぎて中身が薄く感じる」と酷評する者もいたが、同作は興行的に大成功を収めた。

 2作目は86年に公開された『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』。プリンスが監督デビューを果たした本作は、金持ちの娘を手に入れたピアニストの物語で、恋敵や娘の父親から受ける嫌がらせを愛の力で乗り越えていくという内容だった。今作は「ナルシストなプリンスが、くどいまでに光り輝いている」「ファンでなければ楽しめない」と叩かれ、「あまりにも演技力がなく内容も『パープル・レイン』以上に薄っぺらい」と酷評され、最低映画に贈られる「ゴールデン・ラズベリー賞」8部門にノミネートされ最低主演男優賞、最低監督賞、最低主題歌賞を含む5部門を受賞するという屈辱も受けた。

 ここまで叩かれたら、もう映画には手を出さないだろうと思いきや、プリンスは90年に再び映画を製作してしまう。ジェイソン・ドレイパーの評伝『Prince:Life and Times』によると、プリンスは自身が手掛けた大作映画『バットマン』(89)のサントラが大ヒットし、同作のヒロイン役を演じていたキム・ベイシンガーと交際したことで、「キムを主役にした映画を製作したい」という意欲が湧いてしまったとのこと。それを聞いたワーナーブラザーズは『パープル・レイン』の続編ならと了承。周りをイエスマンで固め、監督・脚本・主演の『グラフィティ・ブリッジ』を製作してしまったのである。

 直前にキムと別れためにヒロイン役には別の女性をキャスティング。2人組音楽プロデューサーとして有名なジャム&ルイスらを出演させた。音楽好きな喜びそうなキャスティングだったのだが、「クラブ経営で対立した男が、バンド合戦を繰り広げる」という内容だったため、「どこが『パープル・レイン』の続編!?」と戸惑う観客が続出。今回も「ナルシストなプリンスが妖艶に輝いているだけの作品」だったため、ファンでさえも「歌は最高だけれど、演技を全部見るのはしんどい」と感じた者が少なくなかった。

 『グラフィティ・ブリッジ』で、またもやゴールデン・ラズベリー賞の5部門にノミネート。幸いこの年は、ドナルド・トランプが最低助演男優賞を受賞した『ゴースト・ラブ』など駄作が粒ぞろいの年だったため受賞を免れた。そして、プリンスはもう二度と映画製作には手を出さなかった。

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