大久保ニューの【美のぬか床】 第20回

中年が“病弱メイク”に挑戦も……人形のような白い肌に自己愛を発揮できなかったワケ

美しくなりたい――世の女たちの狂おしい思いを、「44歳、ゲイ、汚部屋に一人暮らし」の漫画家・大久保ニューが担ぎ込む! 古今東西あらゆる美容法に食らいつき、美を追い求める女の情念まで引きずり出す――

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(C)大久保ニュー

 「『病弱フェイス』に挑戦してみませんか?」。担当編集のJ子から、いきなりの提案が挙がった。初耳だったが、どうやら若い女子の間で、はやっている化粧法らしい。なんでも、病弱フェイスの代表格は乃木坂46の白石麻衣さんとのこと。どんな病人顔なのかと画像検索してみると、とてもキレイなお嬢さん。決して余命いくばくもなさそうな、目の周りが黒ずんだフェイスのことではないようだ。「病的なまでに肌の白い、人形のような顔になってみませんか?」とJ子は誘うが、なんとなく結果は見えている……でも、流行には乗ってみるわ!

 そんな流れで、新宿の某カラオケ店へ。メイク道具は全てJ子が揃えてくれていた。「まず、病弱メイクの基本は、緑の下地クリームです」と手渡される。なるほど、肌の赤みを抑えて、生身の人間感を消すってことね。そういえば昔、アトピーの湿疹を隠すのにいいと勧められた化粧品も緑だったなあ。感慨にふけりながら、顔一面に塗りたくる。ワーオ、鏡の中に、2時間ドラマの死体役の人がいるよ?  第1目標の「生きてる感の消失」は大成功だね☆

 そして、第2段階。「人形のような陶器肌」を目標に、一番明るいファンデーションを塗りたくる。緑の下地の効果は絶大で、今まで見たことないくらい、真っ白な顔面の私が鏡の中にいる。しかし、どう頑張ろうと、ここから乃木坂46は狙えないことは明白。来年には46歳になるオッサンだもの……たるんだ目元や、ほうれい線が悲しいね。確かに人形感は出たかもしれないが、40代の人形があるとしたら、それはきっとどこかの部族の人形だよ☆

 ベースメイクが完成し、お次は眉。目と平行に描くのが基本らしい。ポイントは「人形みたいな直線の眉」だそうな。そして「落ち窪んだ人形の目」を目指し、まずはアイライン。目尻で大胆に跳ね上げる感じで。そして、アイホール全体に金のシャドウ。さらに目尻下を残す感じで、グルッとオレンジのシャドウで囲む。仕上げに濃いめのブラウンを黒目の上に厚みをもたせる感じで目の際に入れる。マスカラは、目尻方向斜め上に向かって丹念に重ねづけ。「人形のようにフサフサに」……ってこれ、全然「病弱」じゃなくて、昔からある「ドールメイク」じゃないの?

 おそらくこれは「せつない歌」が「病みソング」となる感じで、「人形」が「病弱」になったものだろう。「お人形みたいなアイメイクをしてみたよ☆」なんてつぶやいたら、即座に「呪いの人形じゃね(笑)」とか言われてしまうご時世。そんなSNS時代を生きる若者の「防御策としての自虐」なのかもしれない。ザ・呪いの人形顔でマスカラを塗りながら、ぼんやりと思った。

若さとは「不幸っぽい」を楽しめる余裕なのかも

しぃちゃん

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