大久保ニューの【美のぬか床】 第19回

美肌信仰と巨根崇拝は同じ? SK‐2コスメカウンターで感じた、“美肌”に狂う女心

2014/12/08 21:00

美しくなりたい――世の女たちの狂おしい思いを、「44歳、ゲイ、汚部屋に一人暮らし」の漫画家・大久保ニューが担ぎ込む! 古今東西あらゆる美容法に食らいつき、美を追い求める女の情念まで引きずり出す――

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(C)大久保ニュー

 「健さん」こと高倉健の追悼番組を見た。以前、CAの従姉から「健さん、ずっと話しかけてきて、すごくおしゃべりだった」という話を聞き、「本当~?」と疑っていたが、番組の中での健さんは、確かに「話し好き」の話し方だった。冒頭からいきなり「銭湯でキンタマつかみをしていた」なんて楽しげに語る健さんは意外な可愛らしさを放っていたが、やはり最後に残る印象は「いい男」だ。何と言っても、顔に刻まれたシワやたるみっぷりがいい。知り合いの60代男子(?)が「親が死んでも泣かなかったけど、健さんの訃報には泣いたよ」と言っていたが、健さんの佇まいには「男があこがれる男」たる、貫禄と説得力がある。いい枯れっぷりとはこのことだろう。

 その追悼番組の中で、健さんの遺作となった映画の撮影風景が映っていたのだが、そこに登場した綾瀬はるかに、いや、はるか様の肌にビックリした。撮影中のドキュメンタリーだから、CMのようなライティングや修正はないであろう状態でも、はるか様の肌はツルッツルのピッカピカだったのだ。「これがSK‐2の力!?」と思わず感嘆の声を上げると同時に、SK‐2のCMで双璧を為している桃井かおりに思いを馳せる。2人が共演するCMの中で、黒いドレスを着たかおり姐さんが「これで63(歳)、ワルくないと思うわけ」と微笑むキメ顔は、たるみレスなツルピカ肌。かおり姐さんにも貫禄と説得力があるのだが、健さんのような「枯れ」は皆無だ。「老い」という自然の摂理にどれだけ抵抗できているかが「女があこがれる女」のポイントなのだろうか。女であるっていうのは大変だなー……と、ぼんやり思った。

 それにつけてもSK‐2。何度も書いているが、私の汚肌を救ってくれた恩人のような化粧品である。バシャバシャと浴びるように使いたいところだが、とにかく値段が高い。基本の化粧水は215mlで定価2万円。フルセットで揃えたら、世界中の子どもにワクチンが打てそうなくらい高い。極貧マンガ家の私は、それこそ命を救う薬のように、大事に大事に使用している状態だ。そんなところへ、先月よりSK‐2デビューをした担当編集のJ子から「SK‐2のカウンターで肌診断をしてみませんか?」との誘いがきた。肌年齢が判明するのは怖いが、一応はSK‐2ユーザーの端くれ。勇気をふりしぼって、都内の某デパートへと乗り込むことにした。

 「大変申し訳ありませんが、男性は肌診断ができないのです」。美容部員のお姉さんから、まさかの先制パンチを食らった。私にアメリカの血が流れていたら訴訟を起こしたかもしれないが、あえなく試合終了。しかし、先月J子が肌診断をして「1カ月後にもう一度診断して効果を実感してください」と言われていたらしく、それにつきあうことにしてみた。一応は男の外見である私は、偽装カップルとしてJ子の隣りに座る。実は私、コスメ売り場のカウンターに座るのは初体験。覗き見気分が高まるね☆

 「これが先月の肌診断の表なんですけど☆」と得意げな様子でJ子が用紙を取り出した。なぜにそんなウキウキしてるのかと言えば、実年齢27歳のJ子の肌年齢が24歳だったからだ。そりゃあ、うれしかろう。J子の担当となる美容部員のお姉さん(たぶんアラフォー)が「では、今の状態を測定しますね」と、大きなドライヤーみたいな形をした肌診断機をJ子の肌に当てる。かなり熱心にSK‐2使い続けたらしいJ子は「まさかの十代肌」を狙っているのか、キス&クライで高得点を期待しているスケート選手のような表情。その結果はタブレットに表示されるのだが……ドロロロロロ(ドラムロール音)……J子の肌年齢は……

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