『法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!』刊行記念企画(前編)

ストーカー、わいせつ図版販売、殺人未遂……マニアとともに傍聴してみた

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裁判所でございます。

 被告人の供述の矛盾点を追及する検察。熱血弁護士が「異議あり! 検察の質問は推測によるものです!」と叫ぶと、裁判官は小槌を叩いてそれを制止する。泣き崩れる被告人の嗚咽が廷内に響き渡った――。

 『火曜サスペンス劇場』(日本テレビ系)、『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日系)でお馴染みの光景を、リアルな裁判に投影している人は意外と多いのではないだろうか。フィクションの中に閉じ込められていた裁判が、裁判員裁判制度の導入により、私たちの日常生活によりリアルなものとなってきている。いつか来るだろう裁判員裁判への参加を前に、何も知らずにあぐらをかいたままでいいのか? そんな思いに駆られたサイゾーウーマン編集部は、『法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!』(エンターブレイン)の著者であり、傍聴歴3年という岡本まーこさんの同行を得て、初めての裁判傍聴にチャレンジしてきた。

■傍聴前に開廷表でスケジュールを!

 傍聴当日、東京地裁に入ると、すぐに空港さながらの荷物検査が行われ、刃物の所持をチェックされる。今回、裁判傍聴を指導いただくまーこさんと合流するやいなや、受付に向かう。そこには既に数人の傍聴人たちが何やら熱心にメモしている。「これが開廷予定表です」とまーこさんに渡されるままファイルを開くと、罪名、被告人の氏名などが記されている。「”新件”は一回目の公判だから初心者にはおススメだけど、”審理”は途中だから分かりづらいかも」とアドバイスを受けつつも、傍聴したい裁判のアタリをつけていく。

 午後イチで行われる売春防止法違反の判決、その後ストーカー規制法違反の審理、わいせつ図画販売の新件を見て、殺人未遂の裁判員裁判で締める。まーこさんが無駄のないスケジュールを一瞬のうちに組み立ててくれた。

 傍聴の前に、地下にある食堂へ。他にも蕎麦屋、喫茶店もある。さらにコンビニ、書店、郵便局まで揃っているとは。「昔は床屋さんもあったらしいですよ」とまーこさん。バーバー裁判所……さっぱりさせてくれそうだ。無難にカレーを選択し、長テーブルに座る。大勢の人が黙々と昼食を取っている。同じテーブルに弁護士、検事、裁判官がつくこともあるんだろうな。やっぱりカツを選ぶのだろうか。スーツの方たちに紛れて、傍聴マニアらしきラフな服装(上下シャカシャカジャージ)のおじさまやセーラー服の一団も。この食堂の中に、さまざまな思惑が渦巻いている……心なしか、ここのカレーはスパイシーだ。

■売春防止法違反の判決、犯人の肩は震えていた

 「2番目に傍聴予定のストーカー裁判は人気があるので、私は先に並んでますね」というまーこさんの判断で最初から別行動となり、超初心者の私と編集Kで向かったのは、売春防止法違反の判決。法廷に入り、ドラマで見た通りの配置に内心感銘を覚える。開廷し、被告人が入場すると、法廷内の雰囲気は一変。事前にまーこさんも「何度か見ると慣れますよ」と言っていたが、やはり生の手錠姿の威圧感は尋常じゃない。

 被告人は派遣型売春、いわゆるデリヘルの経営者、受け付け担当のやり手ババァ、女の子を運ぶドライバーの計三人。元暴力団構成員、組からの足抜け、覚せい剤所持の前科……明らかにされる過去に被告人たちはただうなだれるのみ。執行猶予期間内の再犯ということで、やり手ババァには実刑が下ったが、「次男が責任を持って生活の面倒を見ると言っている」と裁判官が言った瞬間、おばさんの肩が震えたと思ったのは気のせいだろうか。

■食いさがる犯人に恐怖した、ストーカー裁判

 ストーカー裁判は思ったより人が少なかった。開廷予定表では、被告人は中国人であるということを認識していたが、被告人が入廷した瞬間、ハッとした。というのも被告人が女性だったからだ。

 ノーメイクのスウェット上下にサンダルの被告人は、バイト先の店長に恋心を抱き、執拗なまでに追いつめたという。「餃子を差し入れしたり、バレンタインに高級ブランドのベルトを送ったり」「”あなたの瞳の中に私が映ってる”と言ったり」「”今日は抱かれにきた”と迫り」「タンクトップ姿の店長の脇腹を噛んだり」「出入り禁止になったにも関わらず、店内に力づくで侵入し、店長を追いかけ、レジ横にあった店長の写真を強奪した」「一度店から出て行った後、血まみれになって戻って来た」などなど。次から次へと繰り出される”まさか”の所業と、憮然とした態度でそれを聞く被告人。そして、自宅では被告と寸分たがわぬ格好をしている私。彼女と私を隔てるものって、一体……。

 今回の裁判では、事実確認に重きがおかれ、判決は次回以降に。最後に裁判長から意見の有無を問われた被告人が「タンクトップ姿の店長を噛んだことはない。なんでわざわざ脇腹を噛むんだ!」「前回の公判では『次回に判決を出すと言ったのに、なぜまた裁判をするんだ!』」と堰をきったように話し出し、裁判長に「そんなことを言った覚えはありません!」と諭される始末。なにか被告人の思い込みの強さを垣間見たような気がする。

■割に合わない、わいせつ図画販売

 本日3件目の裁判は、わいせつ図画販売の新件。元システムエンジニアである被告は、失業中に居酒屋で”田中と名乗る男”から「アルバイトしない?」と声をかけられ、新宿の雑居ビルで裏DVDを販売していたところ、敢え無くお縄に。「はじめは3カ月だけ、と思っていたけど、思ったより貯金が貯まらなかった」「親には心配をかけたくなかったし、兄弟とは不仲で頼れない」と話す被告人。聞けば日給1万円。リスクを考えれば決して割りのいい仕事ではない。「貧すれば鈍す」――ストーカー事件と同じく、こちらもまた、まったく他人事には思えない裁判だった。

■裁判員裁判による、殺人未遂事件

 ホームレス支援施設での殺人未遂、さらに過去にも殺人の前科がある被告人――。最後に見た裁判員裁判は、明らかにそれまでの裁判と規模も空気も違うものだった。かなりの高齢でシワだらけの被告は、体調不良を理由に長椅子に横になったまま。モニターに映し出される、被害者の生々しい傷跡の数々、それを噛んで含めるように説明する検事。ゆったりと進む審議が、余計に痛々しさを増幅させる。

 老若男女バランスよく配置された裁判員は、この被告人をどう裁くのだろうか。尻をかきながら寝転ぶ被告人を見て、なんだかやるせない気持ちに襲われた。この人だって赤ちゃんの時にはかわいいと言われだろう。誰かを好きになったりしただろう。人間って、どこから柵の向こう側に行ってしまうのだろうか。

 言い知れぬ疲労感に襲われながら、初めての裁判傍聴は終了。後編では今回の傍聴体験をもとに、まーこさんにインタビューしたいと思います。

『法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!』

女性ならではの視点でつづる裁判傍聴記のコミックエッセイ! なんの因果か裁判の傍聴取材をするハメになったライター・岡本まーこ。初体験するや、「なにこの感覚は!?」すっかり傍聴に取り付かれるように通い始めたまーこ。あるときは被告人の涙についホロリ。うっかり情に流されることもしばしば。被告人の発言や証言に一喜一憂、ハラハラドキドキの毎日がはじまった!

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