ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第11回

家族の作り方はひとつじゃないわよ? 『キッズ・オールライト』のリアリティー

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 サイ女な皆さん、今日も孤独死の恐怖に脅えてますか~? だいじょぶだいじょぶ、オカマ含め、そんなのアンタだけじゃないんだから!

 てゆうか、晩婚化や非婚同盟(思い出の昼ドラ)が進んで、ますます昔ながらのホームドラマなんてものの現実味が失われてきたご時世…… 明らかにほっこりよりもドロドロを好物にしてそうなサイ女的にも、「な~にがホームドラマだ! けっ」と悪態をつく皆さんの顔が想像できるわね。ほら唇ゆがんでるわよ! 早くアヒル口に戻して! グワッグワッ。

 じゃあ、こんなホームドラマなら、なうじゃね? とでも言うかのように、新しいカタチの家族を描いた映画が来ちゃいましたよ。『キッズ・オールライト』、ってホントに大丈夫なのかしら?

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どう見てもとても健全で、割とつまらなさそうな仲良し家族のガーデンランチ
の風景......と思ったらババアが二人寄り添ってやがるよ!

 この映画の家族、実はレズビアンカップルが一人ずつ産んだ子どもたちとの4人構成なのね。やだ、オッシャレー!(なんでもオシャレで済ます) 欧米では、それなりによく聞く話にもなってきた同性パートナーの子育て。日本じゃあんまり知られていないけれど、ちゃんと国内にもレズビアンカップルで子育てをしている方はいるのよ。

 ゲイに比べて「自分で産める」点では、レズビアンは子育てしやすいってのはあるわよね。ゲイにも人一倍母性たっぷりで、ミルクが出そうな乳首を持ったネエさんはいるんだけど、さすがに子どもは、根性で直腸からひり出せるわけじゃないし。てか、そんな出生の秘密知ったら泣くわ! 種のほうはムダなほどあっても、他人様のお腹を1年借りるってすごいハードルだしね。というわけでアタシは猫2匹でガマンしてます。

 ところがこの映画の2人は、精子バンクでゲットした見知らぬ男の同じ種を使って、それぞれが時間差妊娠をしたってわけ。アタシが見たほかの海外ドラマとかだと、ゲイの友人の種をもらったりしてるのもあったけど、まるで知らない人ってのも割り切れていいのかもしれないわね。たぶん、この姐さんたちにとっては誰の種か、なんてのはどうでもよかったのよ。自分たちの子であることが大事だったのね。

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誰の種かなんて気にせず孕んじゃった姐さんたち。てか、アネット・ベニングさん。
ご本人は子沢山のお母さんなのに、この映画では超「いるいる」なレズタチおば
さん化してます。見事な役作り!

 でも、子どものほうはそうはいかなかった、のねー。十分に愛ある環境で育って、「うちって超レアな家だけど、お母さんたちはいい人だ」って分かりつつも、やっぱり本当のお父さんってのが気になっちゃうのね。そこで、優等生の長女が弟に頼まれて、精子バンクに問い合わせ、実の父親とコンタクトをとったところから、この珍しくも平和だった家庭に波乱が起こり始めるの。って、導入解説長ぇわ。

 ここで問題になってくるのは、「本当の父親」の意味よね。大人になるまで育ててくれた母親と、血はつながっていないけどその母親と同様に愛してくれたもう一人の母親。そこに、今さら本当の父親ってのが、どう絡めるんだろうってことなのよ。

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種だけ預けてた男が18年目にして「自分の子どもを産んだレズビアン二人」とご対面。
ノンケ男的にはコレ、微妙にエロい状況なのかしら?

 まあ、この実父がどうなっていくかは、映画を見てねって話なんだけど、アタシは脚本のメッセージにすごく納得したわ。結局、血のつながりってのは、そこに思いを託したい人が託せばいいものなのよ。逆に言えば、血縁さえあれば、長年積み上げたものすべてを超えられるなんて、失礼な話だもん。種馬とパパは違うっつーの!(ってネタバレ同然な感想……?)

 とはいえ、この実父役マーク・ラファロさん、最初はこ汚いオヤジだなーくらいに見えたんだけど、激しい腰使いのベッドシーンや人なつっこい笑顔を見てたら、アタシもうっかり種をいただきたくなったわ……危ない危ないっ(福田和子)。

 てなわけで、実父に心を乱されるジュールス役ジュリアン・ムーア姐さんにけっこう感情移入したアタシ。しっかり者のパートナー(アネット)に比べて、仕事がちゃんとできない性格とか(この原稿も締め切り遅れてますヒィ)、性衝動が強そうな感じとか(それに振り回される人生ヒィ)、いちいち深くうなずけるダメさなの……。

 でもさ、大事なパートナーがいようが、愛する子どもがいようが、だからって汚いところのない立派な人間でいられるってわけでもないのよね。そういう意味では、この「ホームドラマ」は本当にリアリティーのある家族を描いてくれてるんだと思うわ。

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「レズママ二人に育てられる子どもの気持ちが分かりますかーッ!」と月影先生ばりに
監督に指導されたのであろう(願望)『アリス・イン・ワンダーランド』の
ミア・ワシコウスカちゃん。

 リアリティーといえば、子どもたちの設定や演技もお見事よ。それぞれの実母のキャラを反映したかのような、マジメな優等生の姉と、悪い友達と離れられない弟。とくに姉のほうの複雑な感情は、後半珍しくキレた時のセリフがよく表してたわ。「普通じゃない家庭だからこそ、普通以上の良い子に育てたい」という親の想いを、痛いほど分かってる子なのよね。これは、ゲイやレズビアンだけじゃなく、きっと特殊な条件のある家庭に共通の、そうとう生々しいテーマ。

 でも、この子どもたちは大丈夫、なのよ!(映画タイトル)

 丁寧に描かれた、登場人物たちの愛情や素直さが伝わるから、この波乱はいずれ落ち着くわ、って見てるほうも確信できる。そしてそんな波を乗り越える経験を共にした時間こそが、本当の家族にしてくれるんだとも思うの。

 「あー、アタシに家族なんて作れるのかしら」なんて思ってるアンタたちも、家族ってものを固定観念で考えないで! 婚活して、公務員の旦那つかまえて、子ども産んで、ママ友とお付き合いして、ってのだけが家族じゃないんだから。2丁目で飲んだくれてて気が合ったオカマと、エッチなしで作る家族だってあるんだし(まさに中村うさぎ姐さんの例)、これからはまさしく、そんな新しい家族が次々に生まれるべき時代のはずよ?

 いつになくアタシを熱く語らせちゃったこの映画。そこいらの無難で凡庸な「ホームドラマ」の何倍も、真摯に「家族」を描いてくれた傑作よ~!

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ブルボンヌ
女装パフォマー/ライター。『この映画がすごい!』(宝島社)『BUBKA』(コアマガジン)等に寄稿しつつ、フジテレビ『知りたがり!』コメンテーター出演や、新宿2丁目ゲイミックスバーのママ業もこなす。芸能通のゲイたちと一緒にオカマなブログ『Campy!』もプロデュース中。

『キッズ・オールライト』
 南カリフォルニアで暮らすニック(アネット・ベニング)とジュールス(ジュリアン・ムーア)はレズビアンのカップル。彼女たちにはそれぞれ子どもがいて、家族4人で暮らしているが、弟のレイザーは、大学進学で家から出てしまう姉に頼み込み、自分たちの父親(人工授精の精子提供者)を一緒に探しだそうとする……。
配給:ショウゲート
公開中
渋谷シネクイント、TOHOシネマズシャンテ、シネリーブル池袋ほか全国ロードショー
公式サイト

【バックナンバー】
・第一回 ブルース・ウィルス『サロゲート』
・第二回 メリル・ストリープ『恋するベーカリー』
・第三回 ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマンなど『NINE』
・第四回 ガボレイ・シディベ『プレシャス』
・第五回 『セックス・アンド・ザ・シティ2 』
・第六回 アンジェリーナ・ジョリー『ソルト』
・第七回 大竹しのぶ『オカンの嫁入り』
・第八回 クリスティーナ・アギレラ&シェール『バーレスク』
・第九回 ヘレン・ミレン『RED』
・第十回 ダコタ・ファニング『ランナウェイズ』



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