仁科友里「女のための有名人深読み週報」

松本人志に「せこいよ」――ビートたけしの“粋な発言”に見る「被害者女性はカネ目当て」の論理

2024/01/25 21:00
仁科友里(ライター)

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

ビートたけしの画像
(C)サイゾーウーマン

<今回の有名人>
「せこいよ。3,000円とか2,000円ってふざけんなよな」ビートたけし
『ビートたけしのTVタックル』(1月21日、テレビ朝日系)

 1月21日放送の『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)で、ビートたけしがダウンタウン・松本人志の性加害疑惑について「せこいよ」とバッサリ斬り捨てた。

 「週刊文春」(文藝春秋)に登場した女性・D子さんによると、松本と後輩芸人の飲み会に呼ばれた際、たむらけんじから松本と性的な行為をするよう暗に勧められ、結局友達が松本と部屋に残ることになったとのこと。帰り際に、たむらから3,000円のタクシー代だけ渡されたと証言した。

 この報道を受け、たけしは、「せこいよ。3,000円とか2,000円なんてふざけんなよな」「素人の人をそんなに呼んで飲んで、交通費2,000円とか3,000円ってそれがせこいし」と、松本サイドの金銭的な振る舞いがよろしくなかったと取れるような意見を述べていた。

有名人からの性被害を訴えると、必ず“カネ目当て”と言い張る人が出てくる

 1月24日付の「日刊ゲンダイ」は「ビートたけしが女性に“刺されない”納得の理由…松本人志を『セコいよ』と一刀両断」という記事で、たけしが過去に交際していた女性に、マンションを買ってあげるなど大盤振る舞いをしていたため、女性とモメたことがないのではないか、それに引き換え、松本は……という内容の記事を配信した。

 世間的にも、たけしの意見は好意的に捉えられているようだが、あの発言は、私には「有名人が素人の女性と飲んで、交通費を数千円しかあげないというケチくさいことをするから、恨まれてしまい、結果、週刊誌にタレこまれた」と言っているように感じられた。

 週刊誌へのタレコミといえば、元「週刊文春」編集長・木俣正剛氏の『文春の流儀』(中央公論新社)によると、「文春」では情報提供に対する謝礼は支払っていないという。しかし、今回のように有名人からの性被害を訴えると、必ず“カネ目当て”と言い張る人が出てくる。本当は同意があって性行為をしたのに、カネが欲しくなったから週刊誌にネタを売りつけて謝礼をもらい、イメージの低下を恐れた有名人にふっかけて、高い示談金をふんだくるつもりだと言い張るのだ。

 この「カネが欲しくて、週刊誌に売った」と主張する“カネ目当て派”と、たけしの「3,000円とか2,000円ってふざけんな」発言は一見異なるように思えるが、根っこのところは同じではないだろうか。

 上述した通り、私には、たけし発言は「ケチくさいことをしたから、女性に週刊誌に売られてしまった」と言っているように聞こえたが、もしそうなら、彼は「オンナに多少ひどいことをしても、カネをたっぷりやれば揉めることはない」と思っているということになる気がする。だとすると、たけしも性被害を訴えた女性は“カネ目当て”と言っているも同然ではないか。

梅沢富美男の「私は素人とは遊ばないから」発言もズレている

 今回の問題について、『5時に夢中!』(TOKYO MX)に出演した梅沢富美男は、「私は素人とは遊ばないから。素人の子と遊ぼうなんてのは芸能人としてタブーだよ。とんでもないことよ」と、自分が女性と遊んでも揉めない秘訣は、素人ではなく玄人――つまり金銭が発生する女性を相手にしているからと明かしていたが、これまたちょっとズレている気がするのだ。

 今、問題になっているのは、性的同意の有無であって、素人だからダメで玄人ならいいという話ではない。「文春」の報道が事実だと仮定して話を進めるが、スピードワゴン・小沢一敬は、飲み会に参加した女性に「VIPとの飲み会」とだけ言って、松本が参加することを明かしていなかったそう。当時すでに既婚者である松本と関係を持ってもいいという女性もいただろうから、最初からはっきりそう言って、同意のある女性を集めればよかったのではないか。

 たけしの「セコい」発言、梅沢の「素人とは遊ばない」発言は粋なようで、結局のところ、女性が性的な行為に同意しているかはどうでもよく、「オンナの問題はカネで解決できる」と言っているように思えてならない。「8年も前のことを今さら蒸し返して」という世論も目立つ中、芸能界の重鎮たちも本質的には味方ではない状況を見るにつけ、性被害を訴えることの難しさをあらためて感じずにいられない。

仁科友里(ライター)

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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Twitter:@_nishinayuri

最終更新:2024/01/25 21:00
それって「カネで支配すればいい」ってことよね?
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