世間からは同情が集まってるけど

ケヴィン・スペイシー、性的暴行裁判で「無罪」判決――『ハウス・オブ・カード』復帰の可能性は?

2023/07/28 19:14
堀川樹里(ライター)
ケヴィン・スペイシー、性的暴行裁判で「無罪」判決――『ハウス・オブ・カード』復帰の可能性は?の画像1
無罪評決を勝ち取ったが前途多難なケヴィン・スペイシー(写真/Getty Imagesより)

 イギリスの裁判所は現地時間7月26日、複数の男性から性的暴行を告発されていた俳優ケヴィン・スペイシーに対し、無罪評決を下した。

 6年前、性的暴行を受けたと告発された直後から、ケヴィンは、メディアやネットから「臆測に基づく一方的な批判」を浴び、「青年を毒牙にかける最低な男」のレッテルが貼られ、仕事も社会的地位も名誉も失った。しかし、今回無罪になったことで、世間から同情が集まり、「有罪が確定するまでは“罪を犯していない人”として扱わなければならない」「臆測でのキャンセル・カルチャーはやめよう」などと反省する声が上がっている。

 一方で、ケヴィンから性的暴行を受けたと告発した2人が自殺、1人が車にはねられ死亡していることから、「大きな闇組織の力が働いて無罪になったのでは」という陰謀説もささやかれており、ネット上はお祭り騒ぎとなっている。

 Netflixを一躍巨大エンタメ企業に押し上げた大ヒットシリーズ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』で主役を演じ、インターネットで配信されたドラマシリーズとして史上初のプライムタイムエミー賞を獲得。名実共にハリウッドの大御所俳優だった2017年に、アンソニー・ラップという俳優から「自分が14歳だった1986年に、26歳だったケヴィンに性的暴行を受けた」と訴えられたケヴィン。

 ケヴィンは「泥酔していたので記憶にない」と謝罪声明を発表し、さらに同性愛者であることをカミングアウトしたが、これが事態に拍車をかけることに。

 当時は、性犯罪の被害者が泣き寝入りせずに告発することをサポートする「#MeToo」運動が活発化していた時期だったため、被害者とされるアンソニーを応援する声が多く、LGBTQコミュニティからは「同性愛者にペドフィリア(小児性愛者)が多いようなイメージを植え付けるから、やめてほしかった」と批判され、大炎上してしまったのだ。

 ケヴィンは性的暴行などしていないと主張したが、『ハウス・オブ・カード』からは即刻クビに。受賞予定だった2017年度国際エミー賞功労賞も取り消され、マネジャーら側近からも縁を切られ、ハリウッドから追放されてしまった。

エルトン・ジョンが証人として出廷、無罪勝ち取る

 ケヴィンは一貫して「性的暴行はしていない」「同意の上での行為だった」「無理やり行為をしたことはない」と自らの無罪を訴え、アンソニーに対し損害賠償金4,000万ドル(約56億円)を求めていたアメリカの裁判では勝訴した。

 今回イギリスで行われた裁判は、 2001〜13年の間の、ロンドンにおける4人の男性に対する計9件の性的暴行容疑に関するものだったが、エルトン・ジョンがケヴィン側の証人として出廷し、原告の主張は嘘であると証言するなど、ケヴィン側に有利に展開。ケヴィンの64歳の誕生日に、イギリスの裁判でも無罪を勝ち取ったのだった。

 裁判中、たびたび泣きながら身の潔白を訴えていたケヴィンは、9つの容疑すべてにおいて無罪評決が下された瞬間、感極まり涙を流したとのこと。裁判所の外で受けた記者たちからの取材でも、「長時間かけて慎重に検討してくれた陪審員に感謝する。判決は身が引き締まる思い」と、声を詰まらせていた。

 ネット上では、「被害者の言い分を100%信じ、有罪判決が出たわけでもないのに、性犯罪を告発された人を犯罪者扱いする世間の風潮を変えなければいけない」という声が高まっており、ケヴィンには同情が集まっている。

【輸入盤】Beyond the Sea/KevinSpacey
metooの功罪を検証しないとね
アクセスランキング