崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

Netflix『ナルコの神』麻薬王逮捕の瞬間は、ドラマよりも劇的? 実際の事件と異なる点とは

2022/10/21 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

『ナルコの神』チョ・ボンヘン、逮捕後に広まったうわさ

 以上が『ナルコの神』の基になった事件と人物の全貌である。逮捕されたボンヘンは韓国に送られ、09年に懲役10年の実刑を言い渡された。ドラマを見ると10年は短いような気もするが、実際には殺人や殺人教唆を犯してはおらず、麻薬密売のみだったという。

 ではその後、ボンヘンはどうなっただろうか? ドラマをきっかけに彼のその後にも注目が集まり、さまざまなうわさが広まった。韓国の刑務所で収監中に病死したとの報道もあれば、刑期を終えて出所後、姿をくらましたとの記事もあり、スリナムで彼を見かけたという目撃情報もあったらしい。少なくとも、麻薬王に舞い戻ったわけではなさそうだが、こうした不確かさもまた、作品の魅力を高めているといえるだろう。

 韓国人たちが南米を舞台に激しい攻防を繰り広げるこのドラマは、もちろん特殊な例に違いない。とはいえ、スリナムには実際、小さいながらも韓国人コミュニティが存在する。

 世界一の人口を誇る中国人のコミュニティが世界中に散らばっていることは特に不思議ではないが、日本の人口の半分にも満たない東アジアの小国である韓国(あるいは朝鮮半島)の人間が、なぜ南米の片隅にまでコミュニティを広げているのだろうか? 

 ドラマの文脈とは離れるが、ここにも「コリアン・ディアスポラ」のキーワードが見え隠れするのは決して偶然ではない。

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