芸能
崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

Netflix『ナルコの神』麻薬王逮捕の瞬間は、ドラマよりも劇的? 実際の事件と異なる点とは

2022/10/21 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。そんな作品をさらに楽しむために、意外と知らない韓国近現代史を、映画研究者・崔盛旭氏が解説する。

ファン・ジョンミン、ハ・ジョンウら出演 Netflix『ナルコの神』

Netflix『ナルコの神』記者会見に出席した出演俳優たち(Getty Imagesより)

 「スリナム共和国」という国をご存じだろうか? 南米北部、ブラジルに接する人口58万人(2020年現在)の小さな国である。かつてオランダ領だったスリナムは、連合軍の一員として朝鮮戦争に参戦した歴史があり、オランダから完全独立を果たした後の1975年に韓国と国交も結んだ。しかし、実際の交流はほとんどなく、韓国政府は93年にスリナムから大使館を撤収、現在は駐ベネズエラ韓国大使館が兼務をしている。

 私を含め、ほとんどの韓国人が存在すら知らなかっただろうスリナムだが、2009年、突如として韓国メディアを騒がせることとなった。「スリナムの麻薬王、チョ・ボンヘン逮捕」という見出しが新聞各紙を飾ったのだ。

 スリナムを拠点にした麻薬密売の巨大組織を率いるボスが韓国人であったという事実は、韓国社会に大きな衝撃を与えた。麻薬をめぐるマフィアの攻防や、警察組織の麻薬取締官などは、映画やドラマですっかりおなじみになった感じはある。とはいえ、まさか同じ韓国人が地球の裏側の南米で、国際的な麻薬王として君臨していたとは想像しなかった。

 しかも、麻薬密売が国家の経済を支えているというスリナムで、ボンヘンは大統領や警察、軍隊からも庇護を受けていたというから驚きである。こうして韓国では、スリナムへの関心が一気に高まったわけだが、事件の詳細は当時詳しく報道されず、ボンヘンについても多くの謎が残ることとなった。そして時の流れとともに、事件のことも人々の記憶から遠ざかってしまった。

 ところが、事件から10年以上がたった今年、またしても「スリナム」「チョ・ボンヘン」の固有名詞が世間の大きな注目を集める事態となった。この事件を基にしたNetflixのオリジナルドラマ『ナルコの神』(ユン・ジョンビン監督)が、国内外で非常に多くの視聴数を獲得し、ヒットを記録したのだ。

 アクションやバイオレンス要素が盛り込まれ、手に汗握るスリリングな展開や、豪華な俳優陣、グローバルな物語展開と、作品としてのクオリティが高いことはもちろんだが、このドラマチックな物語が実在の人物や事件に基づいていることに、韓国人たちはあらためて驚き、同作も注目を集めた。もちろん、ドラマ化の過程でフィクションも相当加えられてはいるものの、実際には、ドラマを超える迫真のエピソードもあったようだ。

 そこで今回のコラムでは『ナルコの神』を取り上げ、実際の事件とドラマを照らし合わせつつ、「麻薬王」と呼ばれたボンヘンと、逮捕の功労者となった人物を中心に紹介していきたい。

※以下、ネタバレを含みます。

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