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メンタルの問題を公表したセレブたち――うつに悩んだビヨンセ、不安障害を抱えるケンダル、摂食障害に苦しむデミ

2020/03/20 18:00
堀川樹里(ライター)

自信にあふれた女・ビヨンセもうつ状態に?

強い女のイメージが強いビヨンセ

 “自信にあふれた力強い女性”というイメージが強いビヨンセ。ソロキャリア初期は、ステージ用の別人格サーシャになりきってパフォーマンスを続けていたというほど、シャイな性格であることはあまりにも有名だ。だが、子どものころのいじめによりメンタルに大きなダメージを受けたことはあまり知られていない。

 2009年に発売された伝記本『Beyonce Knowles』によると、子どものころは学校で「耳が大きくてダンボみたい」「バカ、ブス!」といじめられていたとのこと。そんな彼女は、7歳の時に教師に勧められて参加したタレントショーで、歌う楽しみを知る。ビヨンセの才能を信じた両親は、ガールズグループ「デスティニーズ・チャイルド」を結成。父親はマネジャー、母親はスタイリストとしてグループを応援するようになった。

 しかし、そのデスティニーズ・チャイルドを初期に去ったメンバー2人が父親を訴えたことで、ビヨンセは人間不信に陥ってしまう。06年に米誌「Parade」で、2年間うつに苦しんだことを告白。「食べられなくなってしまって。自分の部屋にこもるようになった」と述べ、メディアに追いかけ回されたことも「攻撃を受けているよう」で精神的に参ったと吐露した。

 自分自身さえも信じられなくなったビヨンセだったが、母親の「あなたは頭が良くて、優しくで、美しいのよ。みんなに好かれるに決まってるじゃない!」という言葉で自信を取り戻し、グループは大成功を収めた。グループ解散後もソロアーティストとして活躍。しかし、大ブレイクして多忙を極めるようになった10年に、ビヨンセは突然活動を停止。半年以上、表舞台から姿を消した。

 11年の英紙「ザ・サン」のインタビューで、ビヨンセは、この活動停止について精神崩壊を回避するためだったと告白。「自分がどこにいるのかわからなくなった。セレモニーや授賞式の席に座りながら、頭の中は次のパフォーマンスのことでいっぱいで」と語り、母のアドバイスに従って長期休養を取る決断を下したそう。

 活動停止中、ビヨンセは博物館を巡ったり、世界遺産の万里の長城を訪れたり。ゆっくりと休養したおかげで、心の健康を取り戻せたよう。「私は母親から、心の健康に気を配るように言われ続けてきたのよね」と感謝しながら、思い切って休む大切さを伝えた。

 ビヨンセだが16年に女性誌「ELLE」で、女性が完璧を追い求めることは危険だとも警告。「女性は自分のメンタル・ヘルスについて、じっくり考える時間が必要。自分のために時間を作って。後ろめたいとか、自分勝手だと思うことなく」と熱弁し、大きな話題を呼んだ。

「21歳まで生きられないと思っていた」デミ・ロヴァート

 子役からキャリアをスタートさせ、米ディズニー・チャンネルの人気青春コメディ『サニーwithチャンス』に主演したことで一躍アイドルスターとなったデミ。しかし、人気絶頂だった2010年に、摂食障害、双極性障害、自傷癖で精神医療施設に入院。明るく元気なイメージを持たれていたため、世間に大きな衝撃を与えた。

 14年、デミはTwitterに「摂食障害は命を奪う深刻な病。単なるダイエットなんかじゃないのよ」「絶食しているみんながダイエットしているわけじゃないし、過食嘔吐するのはガリガリにやせている人だけじゃない。摂食障害は人を選ばない病気なの」と投稿。「拒食症の人に『もっと食べればいいのに』、過食症の人に『吐かなきゃいいのに』って言うけれど、そんな単純な問題じゃない。精神障害への無知・無学が、メンタルの問題に対するケアを後回しにさせている。毎日のように悲劇が起きているというのに」と、世間が摂食障害に対して持っている誤解を指摘した。

 16年には米誌「American Way」で、入所前にはメンタルの問題から薬物を乱用したり、過度な飲酒をしたりと最悪な状態だったと激白。「自分は21歳まで生きられないと思っていた」「(07年に)ブリトニー・スピアーズが精神崩壊した時、『3年後の私の姿』だと思った」と赤裸々に語った。

 同年末には米誌「People」で、「家族、友人、治療をしてくれる専門家たちが、私のメンタルが回復するまでサポートしてくれた」「専門家たちとの関係は今も続いている。精神科医やセラピストに1回会うだけじゃ、終わらない。治療を続け、精神疾患とうまく付き合いながら生きていかなければならないから」と継続治療の重要性を訴え、「双極性障害持ちでも、ちゃんと立派に生きていける。私がよい見本だよ」とメンタルの問題を抱える人たちを励ました。

 ポジティブな姿勢を見せていたデミだが、18年7月には、薬物過剰摂取で意識不明となり、病院に緊急搬送。再び療養生活を送るようになった。

 だが直前に書いた、“精神的に追い詰められ、切実に助けを求める”という内容の新曲「Anyone」で見事復活。今年のグラミー賞授賞式で力強く歌い上げ、拍手喝采を浴びた。デミはその後、ポッドキャストで「薬物依存に陥った原因は摂食障害。克服したと思ってたけど、エクササイズ依存になり、健康的な食事からまた遠ざかってしまった」と告白。摂食障害がいかに恐ろしい病なのかを世間に訴えた。

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