[連載]悪女の履歴書

女としての自信と”落差”、騙される男たち……木嶋佳苗という女の闇を追う

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Photo by TotalEclipse from Flickr

 世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だった――。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、ひとりの女による犯行。彼女たちを人を殺めるに駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感――女の心を呪縛する闇をあぶり出す。

[第3回]

首都圏 婚活連続不審死事件

 千葉県野田市。東武野田線の小さな駅がある。駅前にはコンビニや飲み屋が数件ある典型的な郊外駅だ。線路沿いをしばらく歩くと、一戸建て住宅が集合する一角がある。新築から数年と、さほど時間が経っていないのだろう。ほとんどの家は、外観も美しく延床面積も比較的広そうだ。夕方にはワゴン車から大きなスーパーの袋を抱えた若い母親が、子どもとおしゃべりしながら楽しそうに自宅に入っていく。幸せな一家団欒――。

 そんな郊外の典型的ともいえる新興住宅街の中に、木嶋佳苗被告(37)が逮捕まで最後に過ごした一戸建て住宅があった。

■女としての自負、そして外見との”落差”

 木嶋佳苗被告。”連続不審死事件”婚活殺人”と称され、3件の殺人の他、詐欺、窃盗などでさいたま地裁で公判が行われている注目の女性被告だ。現在30回以上の公判が進んでいるが、この事件が注目を浴びているのは、多くの”女子”アイテムが登場したことも一因だろう。「セレブブログ」「婚活サイト」「高級料理学校」「ブランド品」「高級外車」といったキーワード。そしてセレブ生活を送っていたはずの木嶋被告は、実は外見はデブでありブスであり、しかもこれまで一度も働いたことはなく「男性の援助」で生活をしてきたことが公判でも明らかになっている。その”落差”や”なぜ男たちは簡単に騙されたのか?”という疑問。マスコミが騒ぐのもそうした要因からだ。

「テクニックではなく、女性として本来持っている機能が高い(と男性から褒められる)」
「(騙し取ったお金は)借りたお金ではなく、頂いたお金なので返す必要はない」
「私が(男性に)して差し上げたことの対価」

 木嶋被告は、こうした刺激的発言を次々と繰り出す。実に丁重に淡々と。だが、現時点では2件の詐欺については認めているものの、殺人に関しては無罪を主張。もし3件もの殺人で有罪判決となれば極刑も予想されるが、今回の事件は被告の無罪主張に加え、物証がほとんどない。睡眠導入剤や練炭、コンロといった手口の共通点はあるものの、それは状況証拠である。「裁判官でもやりたがらない難しいケース」(司法記者)であり、裁判員裁判史上最も困難な事件とさえ言われているのだ。

 そんな木嶋被告自身、事件と同様”規定外”だ。法廷でのあまりに堂々とした態度、お洒落に気を遣っているであろう服装。一瞬、同じテーブルに並ぶ弁護人かと見間違ってしまうほどだ。

■24時間警察監視の中で女が向かった先

 連続不審死事件が発覚したのは、2009年8月会社員の大出嘉之さん(当時41)が死亡したことが発端だ。木嶋と大出さんは、当年7月に結婚マッチングサイト「マッチ・ドットコム」で知り合ったとされる。真剣な結婚を望むというメールをやりとりし、「学生生活を応援してくれる人を希望しています」と出会い早々に金銭援助を要求している。大出さんは要求通り、470万円もの金を木嶋に渡す。

 8月5日、大出さんは自らのブログに「今夜から2泊3日で相手と婚前旅行に行きます」と書き込み、木嶋宅に向った。が、翌6日、埼玉県の駐車場の車中で死亡しているのが見つかる。解剖の結果、死因は一酸化炭素中毒で、大出さん体内からは高濃度の睡眠導入剤が検出された。だが車内に車のキーも睡眠薬も遺書もないことから、事件の可能性が浮上、捜査が開始されたのだ。木嶋被告は「駐車場でけんかをして別れた」と主張している。「(自殺は)別れ話でショックを受けたから」という理由だ。これは別の事件でも木嶋被告が主張する”男性自殺”の理由だが、それにしても出会いから金銭授受、死亡まで1カ月というのは早業だ。

 この大出案件が発端となり、木嶋被告の周辺に他不審死や詐欺が次々と”発掘”されていくのだが、その間の木嶋被告の行動は余りにも興味深い。

 9月4日、木嶋被告は家宅捜索を受け、6日までは取り調べも受けていた。そしてマンションには24時間警察が張り込み、外出する際には「行き先を教えろ」と警察から言われていた。捜査が進む中、木嶋被告の妹たちは心配し「一度実家に帰った方がいい」「(通っている料理)学校は休んだ方がいい」と助言している。こうした事態の中、しかし木嶋被告は9月10日には結婚サイトに再登録を行っていたのだ。「(生活費、住居確保のため)助けて下さる方を探す」ためである。しかも自宅パソコンは警察に押収されていたためネットカフェに出向いてまでサイトを利用していた。

 24時間に渡る警察からの監視の中、ネットカフェに行き、「お嫁さんにして下さる方」「早く会える方」を探す木嶋被告。この時、1日に数人の男性と数十通に及ぶメールのやり取りをしていたという。警察監視の中、一刻も早く引っ越したいという気持ちだったという。
(取材・文/神林広恵)

(後編につづく)

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