[連載]悪女の履歴書

ブランド信仰女が陥ったDV生活の果て…… 殺人者となった渋谷”セレブ妻”

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Photo by -ratamahatta- from Flickr

 世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だったーー。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、ひとりの女による犯行。彼女たちを人を殺めるに駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感ーー女の心を呪縛する闇をあぶり出す。

[第2回]
渋谷セレブ妻バラバラ殺人事件

 渋谷の高級マンションに住み、ブランド物に囲まれ、何不自由ない暮らしを送っているように見えたセレブ妻、三橋歌織(当時32歳)が、年収1億円とも言われる外資系企業に勤めるエリートサラリーマンの夫を殺害。2006年12月12日早朝、夫の祐輔さん(当時30歳)の頭をワインボトルで殴打して殺害、遺体をのこぎりで切断し、路上や公園に遺棄した。逮捕された歌織は、友人男性と会話するブリッコ丸出しの「やだ、うっそー、何それ、どうしよう」という肉声が全国に流され、その際、「カオリン」と呼ばれていたことから呼び名が定着。女優の小雪似の美貌とセンスのよい法廷ファッションも世の好奇の目を集めた。

■激しい折檻とステイタスを求める父親

 新潟市から車で40分ほどの場所に歌織の生家はある。サラリーマンからコピー機器会社を興した父と専業主婦の母。下に弟がいる。独善的で支配者のように振る舞う父のもと、虐待に近い心理的影響を受けて育っていると、後に精神鑑定を担当した鑑定医が明かしている。

「子どもの頃から相当厳しく、引っぱたくこともありました。家の中では私が決めたことが絶対なので、話を聞くこともありませんでした。泣くのも構わず、歌織を責めた。そうやって叱ってきました」(父親)

 中学時代の同級生は「大人びていてプライドが高く、一段上に立って周りを見下ろしているような人だった」と歌織を振り返る。光GENJIの話題にも恋愛話にも一切加わらなかった。父の希望で、高校は女子校へ進学し、大学は一浪して白百合女子大に進む。「女は東京の女子大の英文科へ行って、スチュワーデスになるものだと」(法廷証言)言われた歌織は、父の望み通り客室乗務員を志望して航空会社数社を受けるも落ち、派遣社員として証券会社などを転々とした。派遣OL時代は、一流企業との合コンに積極的に参加している。バッグから手帳を出すとき、「ジャジャーン」と効果音をつけるなど、ブリッコ演出が得意だったという。また、実際は数カ月派遣されただけの職場だったにも関わらず、「丸紅勤務」と経歴詐称することもよくあった。

 歌織は女子大生時代から社会人1年目にかけてソープランドで働いていた過去がある。暮らしに困っていたのではない。ただ、ハイクラスのお嬢様と肩を並べるには40万円ぽっちの仕送りでは到底足りなかったのだろう。「下に見られる屈辱と比べたら、身体を売る方がマシ」そんな声が聞こえてきそうである。客である会社社長と付き合い出した歌織は愛人として水揚げされ、以後4年に渡り関係が続く。その間、歌織は理想の相手である会社社長の曹司と婚約するが、男性関係に不信を持った婚約者に問い詰められ破談。その後、何度か見合いをしたりもしたが婚活は上手くいかず……。祐輔さんと出会ったのはちょうどそんな頃だった。

■貧しい結婚生活、1日50通のメール、夫のDV

 歌織28歳、祐輔さん26歳。祐輔さんは中央大学法学部を卒業して1年半、司法試験合格を目指しながら法律事務所でアルバイトする身であった。当時の祐輔さんの収入は月に12万円ほど。歌織のマンションに転がり込む形で同棲が始まり、妊娠が発覚し入籍。「お金がない」と中絶を希望する歌織に祐輔さんは、「金ならどうにかするから産んで欲しい」と懇願した。祐輔さんは不動産会社に転職するが、歌織は反対する夫を無視し堕胎してしまう。殺害直前まで続いた暴力は、1週間後に始まった。

「いきなり床に押し倒され、馬乗りになって殴られ首を絞められました。髪の毛をつかんで部屋中引きずり回されて……」(法廷証言)

 法廷で語られた暴力は壮絶なものだった。ベルトやテープで縛り、逃げ出さないようにクレジットカードを折られる、カバンも服も切り刻まれる。1日に50回以上もメールで行動を確認される、身体の匂いを嗅ぎに来てタバコの臭いがするといって暴力を振われる……。しかし、歌織と祐輔さん側の証言が食い違う部分も多く、歌織の言い分だけを鵜呑みにはできない。

後編につづく

『セレブ妻になれる人、なれない人 ― 年収1000万円以上の男性と結婚できる人の小さな習慣 [単行本]』

プライド高い女は自滅する……のか

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