知られざる女子刑務所ライフ188

刑務所が避難所に!? 近所にあったら困る「迷惑施設」から変わる実態

2024/02/04 17:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)
写真ACより

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける瑠壬(るみ)さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

Paix²(ぺぺ)が『激レアさんを連れてきた。』に出演

 刑務所のアイドル・Paix²(ぺぺ)のお2人がテレビ朝日系の『激レアさんを連れてきた。』に出演されたそうですが、「売れないアイドルが刑務所で大ブレイク!」「ほぼ刑務所だけでライブしているアイドル」とか、あおってて、なんか失礼やなーと思いました。でも、お二人とマネジャーさんはむしろネタにしてます。そのくらいのほうがええかもですね。

刑務所が地震の際の避難所に

 確かに「刑務所で」アイドルになるってレアですよね。

 皆さんにとってムショはどんな存在ですか? やっぱり「ヤクネタ(厄介者)をシャバにおらんようにする施設」で、「必要やけど、近所にあったら、マナーの悪い面会人とか脱走犯とかが怖いから困る施設」やと思います。

 その通りですが、最近は少しずつ変わってきました。刑務所作業製品をお手頃価格で売ったり、地震のときとか備蓄してる非常食を地元の人に配ったり、柔道場とかを市民の避難所にしたりしてます。

 最近では、実際に段ボールベッドや簡易トイレを組み立てる訓練もされてるそうです。地元の人たちは緊張しながらも、訓練に臨んでたとか。普通に怖いですよね。

 でも、東日本大震災の頃に東北でおつとめ(=服役)してた知り合いは、みんな「俺たちに断りもなく、たくさんの食料を地元に配った」と怒ってました。「食べ物が減って、みんなどんどん痩せてった」そうです。

 物価の値上がりもあって、もともとしょぼいムショ飯が、さらにしょぼくなってるそうです。ムショは食べることしか楽しみがないですから、更生する気もなくなりますよね。

 かと思えば、自由度は高くなってるとこもあります。少し前には「男子もリンスOK」ちゅう記事に笑ってしまいました。今どきリンスて(苦笑)。もともとムショは今も「昭和」な感じですから、アリかもしれません。そしてamazonで見たらけっこう売ってました。すごいですね、リンス。

ラクでも「ムショ暮らし」は「ムショ暮らし」

 自由度が高くなっても、ムショはムショ。今は個室も珍しくないですし、どんどん建て替えられてきれいになってますが、行くところではありません。

 福岡県警の元職員が執行猶予中に覚醒剤を使うて、実刑判決を受けてましたね。この元職員さんは、裁判で「覚醒剤を使いたい欲求に勝てなかった」と認めたそうです。「職員」て、刑事さんではなさそうですが、経理とか事務の人ですかね。こうゆう人は多分ムショでいじめられます。がんばってくださいね。

 今ムショにいる有名人といえば、三田佳子さんの次男氏でしょうか。ネットでは「甘やかされて育ったから、もうまともに生活できない」とかさんざん書かれてますが、どうでしょう?

 お母様は、「あの永平寺」で息子さんが修業したことを紹介したりして、今も息子さんの幸せを願ってブログを書いてるのが話題になってますね。瑠壬的には、温かく迎えてくれるご家族がいれば、時間はかかっても更生できると思てます。

 最終的には自覚の問題です。福岡県警の元職員さんにみたいに「(覚醒剤の)欲求に勝てない」とか思てるうちは厳しいですが、本人も実は苦しんでるのとちがいますかね。瑠壬もそうでした。

 世間様は「クスリ(=違法薬物)使うてヘラヘラしてる」と思われてるでしょうが、本人はツラいんです。やめたくてやめたくて仕方ないんですよ。でも寂しいから、つい使うてしまうんです。自覚を持って寂しさを克服……。難しいと思いますが、がんばってくださいね。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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Instagram:@rumichibi1209

瑠壬公式YouTube

最終更新:2024/02/04 17:00
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