知られざる女子刑務所ライフ147

「ムショにいる間は出たくて、出るとムショに戻りたくなる」元女囚が考える、立てこもり犯の心理

2022/07/10 16:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)

シャバに居場所のない立てこもり犯

 ちなみに10年の刑期を終えて出てきた瑠美の友だちは、身寄りもなく、「社会のことまったくわからなくてパニくる」ゆうてました。

 10年前と今って、かなり違いますよね。iPhoneは2007年から販売されてるそうですが、みんなが買うようになったのは、もう少し後と思いますし、ユーチューバーも今ほどいてないし、インスタグラムの日本語アカウントは14年からですね。

 瑠美は家族がいてくれて、スマホの使い方とかは兄に教えてもらいましたが、身寄りがない人はほんまに大変です。服役するような事件を起こせば家族から縁を切られる人も多いし、まあ事件を起こすほうがアカンのですが、出所しても孤立したままやから、「ムショのほうがラク」と思ってしまうんですね。

 そして、事件を起こしてムショに逆戻りとなります。でも、ムショにいてる間は幸せかちゅうと、そうでもないんですよ。人によりますが、やっぱり規則だらけで、好きなものも食べられないので、窮屈なんです。ムショにいる間は出たくて、出てしまうとムショに戻りたくなる、この繰り返しですね。

 今回の逮捕では、長久保容疑者は「人生に嫌気が差した」「ムショに戻りたい」「死刑になりたい」とか話してるそうで、シャバには居場所がないことがわかります。

 以前も書きましたが、「拘禁刑」で問題は解決するんですかね。

伝説の「立てこもり犯」があこがれの人

 あと瑠美は知らない人なんですが、長久保容疑者の「あこがれの人」は、大阪では今も伝説的な梅川昭美(うめかわ・あきよし)なのもネットで話題ですね。

 梅川は、1979年に三菱銀行北畠支店に立てこもって行員さんや警察官を4人も射殺して、女性行員さんを全裸にさせて、最後はハリウッド映画みたいに射殺されてます。日本ではなかなかないですよね。

 梅川は借金まみれやったのに、事件の前にはまたどこかで借金して、近所にカズノコを配って「都会で成功した孝行息子」を演出するイチビリぶりやったといわれています。瑠美が生まれる前は、カズノコは高かったんですよ(笑)。

 もうひとつ。長久保容疑者は昔から虚言癖があったと「フライデーデジタル」に出てました。

 デキ婚で大学を中退するまで4人兄弟で両親とおじいちゃんと住んでたのに、窃盗とかでパクられてからは更生施設を転々として、「小さい頃、両親に捨てられた」とか、別にしてへんのに「ヤクザの運転手をしてる」とか言うてたそうです。

 こういう「ウソの身の上話」は女子にもありがちですけど、まず女子は立てこもらないですよね。この違いは何なんでしょうね? 殺人は女子もやりますけどね。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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最終更新:2022/07/10 16:00
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