私は元闇金おばさん

「闇金」新入社員が見た、夜逃げ社長のその後――ヤクザ登場で「自宅と工場占有」の現場

2022/07/09 16:00
るり子(ライター)

強面集結で暴力団事務所のように

 この日は昼すぎから続々と強面の人たちが会社に集まって、ヤクザ事務所と見紛うくらいの状況になりました。社長と来社された方があいさつを交わしています。

「ご苦労様です」
「おう、お疲れさん。今回も、よろしくな」

 企業舎弟ではないものの、ケツ持ちと呼ばれる暴力団関係者との関わりは深く、物件を占有する時や回収現場で大きな揉め事が起きた時には、結束力が強く、集結していました。社長個人の先輩後輩や個人向けの闇金業者など、グループ会社も複数あり、有事には殴り込みにいくような雰囲気が醸成されます。以前、地元の大親分の葬儀を経験していたこともあって私は平気でしたが、普通の人ならば採用を辞退してしまうレベルの環境といえるでしょう。

「念のため、賃貸契約書の写しも持っていけ」

 M自動車社長らから署名捺印をもらっていたという白紙の賃貸契約書に、各物件の詳細と特約を書き込んだ社長は、そのコピーと数万円の経費を各グループに持たせて現場に送り込みます。結局、この日はM自動車の会社(工場)と自宅、連帯保証人の自宅を占有することになったようで、社員のみんなは事務所に戻れず、入社の挨拶はできないまま帰宅することになりました。

 1日が目まぐるしく、まるでヤクザ映画を見た後のような心境になっていた私は、続きを楽しみに早寝した次第です。

※本記事は、事実を元に再構成しています
(著=るり子、監修=伊東ゆう)

るり子(ライター)

るり子(ライター)

過去に、都内貸金業者で営業と経理を担当。現在は業界から足を洗いひっそりと暮らしている。

最終更新:2022/07/09 16:00
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