私は元闇金おばさん

「闇金」新入社員が見た、夜逃げ社長のその後――ヤクザ登場で「自宅と工場占有」の現場

2022/07/09 16:00
るり子(ライター)

法人の倒産は人の死と変わらない

 この時はわからなかったのですが、「破って入れ」という言葉の意味は、弁護士の封印を破って物件を占有しろという意味でした。占有とは、実際に居座って物件を支配することで、賃借権の実力行使というべき強硬手段です。こうなってしまうと、所有者本人はもちろん、第三者の立ち入りは許されません。このようにして手に入れた賃借権を売却、または転貸することで150万円の回収を図っていたのです。

 いまこんなことをすれば世間を騒がせるくらいの大事件になるでしょうが、平成16年に改正法が施行されるまでは横行していました。たとえ他業者と城(占有対象物件のこと)の取り合いで警察沙汰になっても、厳重注意、最悪でも書類送検くらいで済まされていたのです。

「“看板”を出したら、応援が到着するまで、誰も入れるなよ」

 看板を出すといっても、A3のコピー用紙に社名と電話番号が大きく書かれたものを、玄関に貼るだけのこと。貼り出し方はもちろん、看板に使用される勘亭流の字体が、穢れを外に漏らさぬよう、家人の死を周知させる忌中用紙と同じで、法人の倒産は人の死と変わらぬものだと実感しました。

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