仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

瀬戸大也の不調&不倫は「馬淵優佳のせい」? 「オンナが料理をすべき」の思い込みが、“アスリートの妻”に背負わせるモノ

2021/07/30 11:30
仁科友里(ライター)

瀬戸大也選手の不調も不倫も「妻のせい」?

 瀬戸選手はオリンピック前、「金メダルに最も近い男」として期待されていたが、2020年に「週刊新潮」(新潮社)に不倫を報じられたことで、ANAにスポンサー契約を解除され、味の素のCMも降板、JOCのシンボルアスリートや日本短水路選手権の出場も辞退した。さらに、日本水連が年内活動停止の処分を下すなど、数々のペナルティーを受けた。活動停止処分が明けて、今年2月の「ジャパン・オープン」に挑んだ瀬戸選手は1着でフィニィッシュしたものの、その後、不調に悩まされる。 
 
 馬淵は「AERA」2021年8月2日号(朝日新聞出版)の取材に対し、瀬戸選手の不調は「完全に白米不足でした」と振り返った。瀬戸選手は活動停止中に増えた体重を減らそうと、負荷の強い練習を重ねたところ、疲れすぎて食事が摂れず、体力も落ちるという悪循環に陥ってしまったそうだ。馬淵は同誌で、食欲がない瀬戸選手が食べやすいようにおにぎりを作るなど、食べ方を工夫したエピソードを披露している。 
 
 この記事には「不調は白米で乗り越えた」というタイトルがついているが、馬淵は不調の原因こそ分析しているものの「乗り越えた」とまでは言っていない。事実、瀬戸選手は東京オリンピックの400メートル個人メドレーと200メートルバタフライで、まさかの予選落ちをしている。「不調を乗り越えた」としたのは、200メートル個人メドレーの試合が残っているため、これから戦おうとする選手の戦意を削がないための編集部の温情かもしれないが、それ以外にも、「問題を起こしても見捨てずに、陰日向となって支えて夫を大成させるのが妻の役目」という思い込みによって、「白米不足」に気づいて工夫を凝らした馬淵は、“アスリートのよき妻”というバイアスがかかっているように感じてしまうのだ。 
 
 馬淵は「AERA」だけでなく、『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系)『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)など、テレビにも多数出演している。世間には「夫が競技で成功するかどうかは、妻の頑張り次第」という思い込みがあるから、これで瀬戸選手の成績がよければ「いろいろあったけど、奥さんがしっかり支えた」「奥さんはきれいなだけでなく、明るく気丈」などと称賛されただろうが、今のところ瀬戸選手は予選敗退に終わっている。その結果、ネット上には「こんな時に妻がテレビに出ているから、ダメなんだ」「妻がダメだから、夫の成績が伸びない」とか、「瀬戸の不調は妻のせい」「夫人の気が強いから、瀬戸は逃げ場を求めた」などと、瀬戸選手の不調も不倫も馬淵のせいといったコメントが見られた。 
 
 メディアに頻繁に出演したアスリート妻といえば、元プロ野球選手・野村克也氏の妻、沙知代夫人が思い出される。歯に衣着せぬ毒舌で知られた沙知代夫人だが、視聴者がおおむね好意的だったのは、彼女がアメリカの名門・コロンビア大学出身であるということと(後に学歴詐称疑惑が勃発するのだが)、夫が野球界のスーパースターで名将だったからではないだろうか。野村氏が絶好調の状態で沙知代夫人がテレビに出て、強気なことを言うと「さすが賢夫人、本質をついている」と称賛されたが、成績が悪いのにテレビに出ていると「こんなときにテレビに出ている場合か」と言われていた。このころからずっと、妻の言動自体は二の次で、夫の成績次第ですべての評価が変わっていたわけだ。

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