仁科友里「女のための有名人深読み週報」

羽生結弦は元妻や元カノに「冷たい男」なのか? メダリストを神格化するマスコミの罪

2024/02/09 12:00
仁科友里(ライター)

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

羽生結弦の画像
Getty Imagesより

<今回の有名人>
「去年、私の元カレが結婚したの」エフゲニア・メドベージェワ
公式YouTubeチャンネルより

目次

・オリンピックメダリストは生きづらい

・羽生結弦も離婚騒動でバッシング対象に

・羽生結弦の元カノが“別れの言葉”を告白?

・ネットの世界で誹謗中傷がなくならない理由

オリンピックメダリストは生きづらい――代表的な“被害者”は吉田沙保里

 本連載で何回か書いているが、大物芸能人の二世タレントというのは、実はとても生きづらいのではないか。確かに金銭的には恵まれているだろう。交友関係も華やかで、人脈もあるはずだ。普通の人より芸能界デビューすることも簡単かもしれないが、親の地位は人気を保証しない。宇多田ヒカルのように、親(歌手の故・藤圭子さん)をしのぐ二世はごくわずかで、その多くはバラエテイ番組に出ても、親のネタばかり要求されるなど、親の“添え物”扱いを甘んじて受けなければならない。

 同様にオリンピックのメダリストも、その後の人生に生きづらさを感じているのかもしれないと思うことがある。日本人選手が世界のトップに立ったとき、国民は熱狂し、メディアは選手を神格化する。親でも特に母親の教育法は“完璧”と称賛され、講演会や専門とする競技の教室などビジネス展開することも珍しくない。しかし、ひとたび“何か”があると、メダリストやその家族は、一気に叩かれまくる傾向があると思う。

 代表的な“被害者”は、アテネ、北京、ロンドンオリンピックで金メダルを獲得し、「霊長類最強女子」といわれた元レスリング選手・吉田沙保里。2012年に国民栄誉賞を受賞した際、振袖で金屏風の前に立った彼女を、メディアも一般人も「きれい」「かわいい」と褒めそやした。抜群の知名度と好感度で、彼女のことを悪く言う人は誰もいなかったと記憶している。

 その風向きが変わったのは、19年。現役を引退し、バラエテイ番組に進出しだしたときだったのではないか。「服装が似合っていない」に始まり、「(旧)ジャニーズ事務所のタレントとべたべたしすぎ」「番組での進行がヘタ」など、散々な言われ方をされるようになる。オリンピック選手から、元オリンピック選手になった途端、まるで魔法が解けたように、テレビのおもちゃにされ、ネット上で攻撃のターゲットにされるようになったと思えてならないのだ。

「妻より母を取った冷たい男」羽生結弦が離婚騒動でバッシング対象に

 今、同じ状況下にあるのは、元フィギュアスケート選手の羽生結弦ではないだろうか。ソチ、平昌オリンピックで金メダルを獲得した、日本フィギュアスケート界の至宝。しかし、22年に現役を引退した後、翌23年8月に相手を明かさないままSNSで結婚を報告し、11月に離婚を発表したことから、バッシングの対象となってしまう。

 離婚に至ったのは、夫婦不仲だからではなく、メディアの行きすぎた取材により、妻を守り切れないと判断したからという、わかるような、わからないような理由だった。

 ストーカー行為に悩まされていたのなら、警察に相談する方法もあるし、彼の会社からメディアに抗議してもいいだろう。ワイドショーや週刊誌を名指しして、公に警告を出せば、世論も味方にできたと思う。このように打つ手はいくらでもあったような気がするが、それらをせずにあっさり離婚してしまったように見えた。

 そんな羽生に、結婚前はプロのバイオリニストとして活動していた元妻側も黙ってはいなかった。元妻の後見人を名乗る男性が実名・顔出しで「週刊文春」(文藝春秋)に登場し、2人の短い結婚生活の実情を明かしたのだ。

 元妻はゴミ出しを含めた外出さえ許されず、食事など身の回りの世話もさせてもらえず(母親がしていた)、羽生家で立ち上げた会社にも元妻は入れてもらえないと、完全よそ者扱いだったとのこと。

 あくまでも一般論だが、飛び抜けて優秀な息子を持つ母親は、息子かわいさに結婚しても「あの子のことは私でなければダメだから」とばかりに、息子を離さないことがある。

 記事を読んでいると、羽生家も「そういう家庭」であり、そこに元妻がなじめなかったような印象を受けた。家庭内のことは双方言い分があるだろうが、羽生を「母親にべったりの男」もしくは「妻より母を取った冷たい男」とみなす人もいたのではないか。

「もうあなたは必要ない」羽生結弦の元カノが“別れの言葉”を告白か?

 そんな羽生の離婚騒動が少し落ち着いてきたかと思いきや、今度はロシアの有名フィギュアスケート選手・エフゲニア・メドベージェワの告白が話題となっている。メドベージェワが、自身のYouTubeチャンネルで「去年、私の元カレが結婚したの。私は『ははは』って感じだった。その3カ月後に彼は離婚して、私は『アッハッハ!』と思いました」と発言したと、ロシアの大手サイト「Starhit」が報じたというのだ。

 世の中には3カ月で離婚する人もそれなりにいるだろうが、タイミング的に、メドベージェワの言う元カレ=羽生説が浮上。交際については、18年に羽生自身が否定しているものの、メドベージェワは過去に別のYouTubeチャンネルで、「オリンピックが終わった瞬間、彼はこう言ったの。『ありがとう。もうあなたは必要ない。あなたがいなくても、私の人生はすべてうまくいっている。さようなら』。私たちはほぼ2年間一緒にいたのに」と相手の男性との別れを告白しており、これもまたネット上で羽生のことではないかと指摘されていた。

 その男性が羽生であったかどうか、真実はわからないが、離婚で「冷たい男」というイメージがついてしまっただけに、「元妻だけでなく、元カノにも冷たかったんだ」と思い込んでしまう人もいるだろう。特に羽生の場合、「氷上のプリンス」と呼ばれ、紳士的なイメージが強かっただけに、彼に幻滅して、ネット上で批判する人、中には誹謗中傷に走る人もいるかもしれない。

 けれど、もし2人が本当に交際していて、メドベージェワの言う通り、羽生が一方的に別れを告げたとしても、別れるときの男女なんてこんなものではないかと、私は思う。話し合って円満に別れるのがベストかもしれないが、納得して別れるカップルなんてごく少数。別れたいほうは、相手にもう気持ちがないから冷たくなるし、別れたくないほうはひどい人だと恨みを募らせる。それもよくあることだ。なので、私はこの相手が羽生だとしても、彼を特別ひどい人とは思わない。

勝手に褒められて、勝手に叩かれるアスリートたち

 ネットの世界で誹謗中傷がなくならないのは、マスコミがオリンピック選手など、活躍した人を聖人君子扱いして、崇めすぎることも関係しているのではないだろうか。

 人間である以上、いつも誰に対しても完璧であることは不可能だし、そもそも、生活のすべてを競技に捧げている人だから、一般的な生活を送っている人から見たら変なところや抜けているところ、理解しがたいところだってあるはずだ。

 それなのに、メディアは彼を「聖人君子だ」「完璧だ」と喧伝する。素直な人はそれを信じ込んでしまい、裏切るような何かが起きると、その反動で「ウラの顔があった」とばかりにバッシングを始めてしまう。勝手に褒められて、勝手に叩かれて、アスリートたちは本当にお気の毒だ。

 羽生のファンは、彼のスケーティングが好きなはず。離婚しようが、元カノと何があろうが、関係ないのではないか。アスリートをおもちゃにするのは、もうやめようと全メディアに言いたいが、言ったところでやめないこともわかっている。大衆はスーパースターも大好きだけれど、スーパースターの転落はもっと好きなのだ。羽生は凄腕の広報担当者を雇い、マスコミ対応をお任せして、自分自身のメンタルを守っていただきたい。

仁科友里(ライター)

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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Twitter:@_nishinayuri

最終更新:2024/02/09 12:07
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