女のための有名人深読み週報

壇蜜、「若い子好きの夫」に不安を抱く妻に助言も……「悩み相談の名手らしからぬ」と感じたワケ

2020/05/07 21:00
仁科友里(ライター)

30歳前後の女性に「おばさん」を自称させることの是非

 人生相談は読者が「うまい!」と思うことが大事であって、実際の解決方法を提案する必要はない。ヤフコメを見る限り、壇蜜の回答が支持されているわけだから「いい仕事をした」と見ていいのだろう。

 しかし、壇蜜の持ち味である「誰も責めない」という原則が、今回の相談では珍しく破られているのにお気づきだろうか。幼子を抱えた30歳前後の女性が、「40代の夫が若い子にちょっかいを出していること」に不安を持っている。「妻子持ちが何やってるんだ」と夫を責めず、30歳そこそこの女性に、若い子と対極の存在を意味する「おばさん」を自称させようとしている。つまり壇蜜は、相談者の女性を直接的に責めてはいないものの、「自分自身を貶めさせる」ことを推奨するのは、間接的に責めているように感じるのだ。妻が「おばさん」を自称する真意に気づかずに「本人が言ってるんだから、おばさんとして扱っていいんだ」と、夫が素直に信じてしまう可能性もなくはないだろう。やはり自分で自分を貶めるようなことは言わないほうがいいのではないか。

 壇蜜のメインの支持層が男性だから、その層を傷つけない、だから相談者の夫も悪く言わないと言うのは、タレントとして賢明な判断だとも思う。しかし、それは女性側を傷つけていいという意味ではないだろう。「誰も責めない」ことが評価されているように見える壇蜜にしては珍しいミスだと私は思ったが、それでは、どう回答すればいいのかと言うと、これがまた難しい。

 例えば、「若い女性が40歳過ぎた妻子持ちなんて相手にしませんよ!」と言えば、相談者の愛する夫を貶めることになる。一方、昭和の人生相談でよくなされていた、「あなたは妻なのだから、どっしりと構えていなさい」という回答もふさわしくないだろう。これは「妻以外の女性とのセックスは所詮、遊びなのだから」という意味が含まれた回答だが、これだけ芸能人の不倫や離婚が取りざたされる中、相談者も妻という立場に胡坐をかいてもいられないからだ。はたまた「社内の若い子を飲みに頻繁に誘っていると、セクハラって言われるかもよ!」というのも、壇蜜のキャラと合わないからNGなのではないか。

 悩み相談の名手・壇蜜ですら、このお悩みに「誰も傷つけない答え」を導きだせないのは、そもそもこの相談自体にねじれがあるからではないだろうか。

 「浮気しているとしか思えない」証拠を見つけてしまったのなら話は別だが、相談者の夫が若い女性と連絡を取っていることを、「浮気してる」と見るか、「仕事の相談に乗っているんだ、それだけ後輩に慕われているんだ」と思うかは、相談者の感じ方の問題のように思う。不安を感じやすいタイプの人だったり、自分も違う女性から夫を奪い取ったなど「身に覚え」がある人は、ささいな出来事も、悪いほうに考えてしまうだろう。こういう人に「浮気なんてしないと思うよ」と言ったとしても、世の中に100%はないので「なぜ、そんなこと断言できるの?」と不興を買うことも考えられる。なので、この問題の芯は、夫が若い子が好きなことではなく、なぜ相談者がそんなに不安になるのか、なぜ夫を信じられないのかを考えることではないだろうか。

 求められてもいない私の意見はさておき、ジェンダーをめぐる炎上が珍しくない時代、30代そこそこの女性に「おばさん」は適切な表現ではなかったと思う。壇蜜がいきなり男女平等を訴えるキャラになる必要はないが、不用意に女性を貶めないことは、今後の壇蜜にとって一つの課題となるのかもしれない。

仁科友里(ライター)

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2020/05/07 21:08
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