「元極妻」芳子姐さんのつぶやき71

「新・2つの山口組」問題――任侠山口組が「絆會」になった背景を元極妻が考える

2020/01/19 16:00
待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

「3つ目の山口組」が消滅

 世間的には、年末年始もゴーンさんの電撃出国とか国会議員の逮捕とか、すごいことになっていましたが、ヤクザの元日はおおむね静かでした。特に「特定抗争指定暴力団」に指定された六代目山口組と神戸山口組は本部事務所も使えないので、傘下組織の組員が交代で泊まり込む「当番」もなく、若い衆はラクだったようです。でも、最近は暴力団排除の影響で、ヒマでもお金はない人たちが大半ですから、お正月どころではないのも事実。まったく、これからどうなるんでしょうね。

 ……などとのんびり書いていたら、ちょっとびっくりするニュースが入ってきました。今回、「特定抗争指定暴力団」に指定されていなかった「3番目の山口組」である任侠山口組が、組織名を「絆會(きずなかい)」と改称したのだそうです。

 この任侠山口組(当初は「任俠団体山口組」)は、2017年の旗揚げの際に異例の記者会見をして注目されたことでも知られています。会見では、「本来の山口組に戻すために立ち上がった」神戸山口組が、実際には六代目山口組の路線と同じだった……と批判していました。脱・反社会的勢力を掲げながら「山口組」を名乗るのは、「自分たちこそ任俠道をわきまえた山口組」という決意だったのでしょう。設立当初は代紋も同じでしたが、今回は替えるそうです。

 これについて、メディアはだいたい同じ見方でしたね。任侠山口組は目立った抗争もなく、今回も「特定抗争指定暴力団」の指定を免れていることから、ムダな抗争は避けて当初の目的だった「山口組の再統合と大改革」も諦めて、本来の任俠の道を歩むのだろうということです。

 たしかに、かつては「山口組」という看板に威力があったのは事実です。山口組に限らず、どの組織の組員も自分の組や代紋を大切にするものですが、規模や資金力で「山口組の存在感」はすごかったですからね。でも、暴排によって、今は山口組を含めて「ヤクザであること」が重荷になってきています。正業には就けないのですから、覚醒剤やオレオレ詐欺くらいしかシノギはないですし、子どもが学校や保育園に通えないなど、家族にも迷惑がかかっています。

 とはいえ絆會が「脱・山口組」や「脱・反社会的勢力」を掲げたところで、神戸山口組や警察が「ハイそうですか」と納得することもないでしょうし、実際には何も変わらないと思います。ただ、警察的には、対立抗争の構図は「三つ巴」より「六代目山口組vs神戸山口組」のほうがラクかもしれません。もっとも絆會の監視を弱めることもないでしょうけど。

1億5,000万円を盗んだ六代目山口組傘下組員

 個人的には、絆會のニュースよりも、3年前の「ソープの金庫泥棒」が現役の六代目山口組関係者だったことのほうが驚きました。だって、自分の組織のシマですよ? いったい何があったのでしょうか……。

 オットの元兄弟分たちに聞いても、「今、どこもカネないからなあ」とか。ただし、報道にあるような「カネ回りのよさ」は誰も実感していなかったという話もあります(苦笑)。何かウラがあるのかもとは思いますが、今のところの報道だけでは「ヤクザがついに自分の組のシマで泥棒まで……」という印象しかなく、「これも暴排の影響です。過剰な暴排では、むしろ犯罪が増えます」と分析せざるを得ません。

待田芳子(作家)

待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻。夫とは死別。本名・出身地もろもろ非公開。自他共に認める癒やし系。著書に『極姐2.0 旦那の真珠は痛いだけ』(徳間書店)がある。

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最終更新:2020/01/19 16:00
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