ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第12回

セレブ妻の闇は深いわ~! 映画『クロエ』が描く生々しい奥様の欲望

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 サイ女な皆さん、今日も、絵に描いたような他人様の幸福に、どっかほころびがあるんじゃないかと探してますか~。

 ままま、その斜め目線やのぞき見根性こそがサイ女の生命の源って気もするので、皆さんの楽しみを奪う気はないんですけど、多分みんなが思ってるほど、そういう「はたから見てできすぎな環境の女」って幸せを感じてないんじゃないかと思うのよねー。

 アタシが今クール、楽しみに見ているドラマは『名前をなくした女神』(フジテレビ系)なんですけどね。そう、ママ友地獄の話よ。新宿2丁目のママ友交流もたいがいエグいんですけど、世間の真のママ友ワールドもこんなに激しいのかと毎回、画面に女子プロ観戦ばりのヤジを飛ばしながら見てるわけです。

 これに出てくる木村佳乃さん(年をとるごとに生き生きと怪演するようになったステキ女優)演じるレイナ様がすっばらしいの。女性誌「Grazia」でカリスマ主婦モデルをしているお育ちの良いセレブママで、ダンナは一代で財を成したイケメン企業家。もうこの設定だけで、実在してたらサイ女ライター陣の餌食になりそうなキャラですけど、家庭ではダンナには疎まれ、子どものお受験もうまくいかないイライラママなのね。そんなレイナ様がケータイのお悩み相談サイトで「夫が手を出してくれなくてセックスレスです……」って匿名で書き込んだら、ようやく1件だけついたレスで「あなたの魅力が足りないのでは? カリスマ主婦のレイナさんを見習ってみて!」と言われて心底ガックリくるという、アタシも拍手喝采を送った痛快なシーンがありました。

 そうなのよ。出来すぎな幸せには、たいてい闇が潜んでいるもの。

 レイナ様が好きすぎて、えらい長い前振りしちゃいましたが、今回の映画もそんなセレブ奥様が主人公のお話、『クロエ』よ!

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年の差レズビアンカップルに見えなくもないこの絵ヅラ......。
いや、それってあながち外してないわ!

 ってちょっと待ったー。これ主演女優、ジュリアン・ムーア姐さんじゃん。前回の『キッズ・オールライト』とまんまかぶってんじゃん。大好きな女優だけど、どうなの、連載的にこういうダブりってー。

 と最初は思ったんですけどね。見ていろいろ感じた結果、ジュリアンがレズビアン夫婦(婦婦?)を演じたあの映画と、この作品を連続で紹介できたご縁にも、とても意味を感じる結果となりました。

 ではストーリーをざっくり。夫は大学教授、息子は音楽大学生というキャサリンは、自身も産婦人科医として成功し、大邸宅に暮らす何不自由ない生活を送ってるの。ある日、夫のケータイに届いた女子学生からのメールを見てしまった彼女は、浮気の疑念にとりつかれ、ふとしたことで知り合った若く美しい娼婦クロエに、夫を誘惑しその様子を報告するよう依頼するのね。彼女の生々しい報告に動揺しながらも、深みにハマっていくキャサリンは、彼女を通じて彼の肉体を感じるかのようにクロエと同性の関係まで結んでしまうの! でもその後、実は……。

 という感じでー、まさしく「絵に描いたような幸福」の中で生きる奥様の闇を描いてるのね。だからアタシが常日ごろ、彼氏や夫のケータイはコソコソ見るなっつーてんのよ! 絶対良いことないって。

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医者に大学教授にエリート音大生という、絵に描いたようなセレブ家族。
肩書でも現ナマでもいいから、アタシにも何かちょっと恵んで。
でも奥さんは嫉妬深いよ!

 考えてみたら、キャサリンの持つ闇なんてのはさ、ごくごくありきたりなものなのよ。逆らえない老い、離れていく息子、夫の浮気への疑念……。はあ? そんな鼻クソみたいな悩みで、もったいつけて不幸演じてんのか! と、アタシや、苦い水飲んできたサイ女の皆さん(決め付け)なら毒づきたくなるレベルじゃない?

 でも、あまりにも磨かれた美しい鏡面だと、小さな汚れでも気になって仕方ないように、彼女みたいな高い立ち位置で生きる女は、相対的にちょっとした傷にも耐え難い痛みを覚えてしまうんでしょうね。正直、シンパシーわかないけどぉ。

 そう、鏡面という例えをしたけれど、この映画、至る所に鏡やガラスが出てくるの。その映り込みを生かした映像演出も多い。キャサリンの闇を引き出す存在、娼婦クロエと出会うのも洗面所の鏡越しだったわ。てかこのクロエ、キャサリンがオバはんだてらにうっかりヤッちゃった気持ちも分かるってくらい、激しくセクシーなの!

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ねークロエ、エロくね?(回文)
『マンマ・ミーア!』の娘役でブレイクして、主演作『赤ずきん』も公開される
超注目女優アマンダ・セイフライドちゃん!

 アマンダちゃん演じるクロエは、ほんと彼女でなかったらこの味は出せなかったんじゃないかっつーくらいのハマり役。アタシ、もともとユマ・サーマン系爬虫類美女って好みなんだけど、彼女は絶妙なバランスの雰囲気を持ってるのよね。娼婦役らしい匂い立つようなエロさを持ちつつ、時にはピュアな恋情も感じさせ、だけど常にどこか虚無感のあるたたずまい。こりゃイイ女優よ。やっばい、本気でアマンダになりたくなってきた。

 セレブ奥様が時間をかけて作り上げた完璧な世界に、そんな娼婦のクロエが入り込んでくるのよ。程遠い存在のはずの彼女こそが、奥様が見て見ぬふりをしてきた、もう一人の自分の象徴なのよね。夫との失われた情事や、思春期の息子への複雑な愛情。奥様の心の底にたまっていた欲望を、クロエは生々しく映し出しちゃう鏡だったのね。クロエ……恐ろしい子!

 前回紹介した『キッズ・オールライト』が、レズビアン母二人の家族という、常識のカタチからは真逆の家族の中に、普遍的な絆や愛を見つけていったのだとすれば、同じジュリアン姐さんが演じたこちらの作品では、どこまでも王道かつ上流の家族の中に潜む、常識という束縛から逃れたい衝動を描いた作品なわけで、ここにも鏡のような縁があったわけ(そんなシンクロを見つけてご満悦のアタシ)。

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リーアム・ニーソン×ジュリアン・ムーアのアカデミー賞ノミニー夫婦。
老いた女がオトコを盗られる恐怖ってのは、普遍的なのね~。

 物語はサスペンスタッチながら、どこか切なく、優しい余韻を残して終わるけれど、正直アタシもすっかりクロエに魅了されちゃったわ。あー、あのプリップリの乳とケツ!(そこ?)

 きれいは汚い。汚いはきれい。美しさや幸せなんてのを求め過ぎると、自分にだけは隠せない埃が気になって仕方なくなるもの。逆に言えば、一見どんなに汚いものの中にも、可能性を秘めた宝石は紛れてるってことよね。サイ女の皆さんには後者の法則こそ大事なはず!(また決め付け)

 キレイに生き過ぎてる人は、たまには地の底から響くような声で「オ○○○~!」って叫ぶといいわよ。毒づいてばっかりの人は、たまには恥ずかしいくらい優しい言葉を苦手なやつにかけてみるといいわよ。

 女装と男装を使い分けて生きるアタシには、『クロエ』に描かれた合わせ鏡の陰陽哲学が心地よく染みたわ。ただ、多分アタシの中にいるのは、ジュリアンとアマンダじゃなくて、ジュリアンとリーアムなのよねー。ババアとオッサンの切り替えってどうなのかしら……。

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ブルボンヌ
女装パフォマー/ライター。『この映画がすごい!』(宝島社)『BUBKA』(コアマガジン)等に寄稿しつつ、フジテレビ『知りたがり!』コメンテーター出演や、新宿2丁目ゲイミックスバーのママ業もこなす。芸能通のゲイたちと一緒にオカマなブログ『Campy!』もプロデュース中。

■『クロエ』
産婦人科医として成功し、大学教授の夫と一人息子との三人で、人も羨む幸せな人生を歩んできた妻キャサリン。だがある日、彼女は夫と教え子との浮気を疑わせる携帯メールを見つけてしまう。不安な気持ちを抑えられなくなった彼女は、娼婦クロエを雇って夫を誘惑させ、夫がどんな行動を取ったか報告を受ける。しかし、やがてキャサリンとその家族はクロエに翻弄され、平和な日常はもろくも崩れていく。
監督:アトム・エゴヤン
出演:ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソン、アマンダ・セイフライド
配給:ブロードメディア・スタジオ/ポニーキャニオン

TOHOシネマズ シャンテ他、全国順次公開中!
公式サイト

【バックナンバー】
・第九回 ヘレン・ミレン『RED』
・第十回 ダコタ・ファニング『ランナウェイズ』
・第十一回 ジュリアン・ムーア『キッズ・オーライト』



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