[連載]海外ドラマの向こうガワ

最終話が衝撃的!? ”母親不在”を乗り越えた『フルハウス』の魅力とは

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『フルハウス』(エイト・シーズン) コレクターズ・
ボックス/ワーナー・ホーム・ビデオ

――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!

 これまで数多くのファミリー・コメディーがアメリカで制作され、世界中で放送されてきた。しかし「下品な言語表現」や「暴力的な表現」で笑いをとることが多く、家族全員で楽しめる真のファミリー・コメディはほんの一握りである。

 「子供にも安心してテレビ番組を見させてあげたい」。アメリカの親たちは半世紀以上前から積極的に市民活動を行い、「チャイルド・セーフなTV視聴環境を!」と訴えてきた。そして、映画業界に遅れること30年。1997年1月にテレビ業界で年齢規制制度が導入され、6段階から成るランクづけが表示されるようになった。

 子供たちだけで視聴することができる「全年齢視聴可=TV-G」ランクを与えられるのは、「暴力(モラハラ、アルコール、麻薬乱用も含む)」「性的描写」「下品な言語表現」「性行為を連想・暗示される会話」「空想や妄想で暴力を振う」シーンが一切ないクリーンな作品のみ。子供番組以外でTV-Gを取得するのは至難の業だが、1987年から8年間にわたり放送されたファミリー・コメディー『フルハウス』は文句なしでTV-Gにランクされた。

 妻を交通事故で突然失った男性が義弟、親友と助け合いながら、遺された10歳、5歳、6カ月の娘たちの育児に奮闘する『フルハウス』は、「こてこてファミリーもの」と「観客の笑い声の入るシットコム」好きなアメリカ人の心をがっちりと捉え、放送直後から高視聴率をマーク。

 毎回、娘たちによる「たわいない」事件が勃発し「3人のパパ」たちが振り回されながらも、短い放送時間内に問題を解決。ハグして終わり、というスタイルが定番で「damn!(むかつく!)」「hell!(最悪!)」という台詞が「下品な言語表現」に値するのでは?という意見もあったが、それ以外は「子供らしさ」が全面的に出た優良作品だと評価。「大人は癒され、子供は共感できる」と全米が虜になった。

シングル家庭の多いアメリカでは、育児バイブル!?

 ドラマの人気を支えてきた子役たちは全シリーズに渡り出演。そのため、ティーンに成長した長女の思春期独特の問題や、父娘関係の変化は避けて通れないものとなり、シーズン5以降は心の内や悩みを打ち明けてくれなくなる長女D.J.に父親ダニーがうろたえる場面が多く登場するようになる。

 それまでは「3人のパパ」の一人・ジェシーおじさんの彼女で、シーズン4に結婚したベッキーが、大人の女性として「娘たちのよき相談相手」となり乗り切ってきたが、思春期という大切な時期だからこそ、プロデューサーは父子家庭における父娘関係にこだわった。あえて「母親不在による問題点」をくっきりと描き「最終的には父娘の話し合いにより解決」というスタイルを突き通したのである。

 何があっても決してぶれることのないダニーの姿勢は絶賛され、作品は単なるコメディー枠を飛び出し「思春期の子供を持つ家庭でオススメ」の育児バイブル・ドラマへと成長。離婚率が高くシングル(ファザー・マザー)家庭が多いアメリカにおいて『フルハウス』で描かれている親子関係は「完璧ではないけれど、理想的」だと高く評価されるようになった。

 先日、日本でもDVDがリリースされた最終シーズン8では、高校卒業をむかえるD.J.が「ティーンとアルコール問題」に直面。このエピソードに関してはTV-Gではないという意見もあるが「母親は飲酒運転者による交通事故に巻き込まれ命を落とした」とD.J.がカミングアウトし、飲酒運転撲滅メッセージを送ったとポジティブにとらえられている。

 コメディーと油断していると「よい意味で」意表をつかれる本作品の中で、恐らく最も「ドキッ」とさせられるのが、最終エピソード2話で「落馬し記憶喪失になった三女ミシェル」が、記憶を呼び戻そうと必死な皆に「ママはどこ?」と問うシーンであろう。母親の記憶などないミシェルのこの発言は、万国共通である「母親の存在の大きさ」が感じられるものであり、亡き母親も『フルハウス』の一員であるのだと表現。時代を超えて世界中で人々を魅了するのは、この「深い家族愛」なのだと教えてくれる。

 『フルハウス』は長女のプロムで幕を閉じる。ミシェルやステファニー好きなファンにとっては物足りないかもしれないが、アメリカ人にとっては「一区切り」とされる、高校卒業記念のフォーマル・ダンスパーティー、プロムこそが、最終話にふさわしいもの。サプライズありのラストエピソードは必見である。

 三姉妹に癒やされるのもよし、子育ての参考にするのもよし、自分の思春期を思い返してみるのもよし。家族の原点を教えてくれる『フルハウス』効果をぜひ体験していただきたい。

堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。

『フルハウス』(エイト・シーズン) コレクターズ・ボックス

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