“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験で全校合格、しかしすぐ不登校に……「半狂乱になった」心配性の母親の告白

2023/12/09 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

悩みごとを抱える女の子とその母親の画像
写真ACより

 早いもので12月に突入。中学受験生である小学6年生の母たちは気が気でない毎日を送っていることだろう。というのも、中学受験は年明けすぐに本番を迎えるケースが多いので、“嵐の前”に当たる今の時期が、ある意味一番、不安感を強く感じてしまうからだ。

 今年の春、長女・舞華さん(仮名)の高校受験が終了した美香さん(仮名)は、「『中学受験の時の轍は踏むまい!』という気持ちでサポートをした 」という経験を振り返る。

「舞華の中学受験時、 私は自分でもあきれるくらい心配性でした。特に子どものこととなると、すべてが心配でたまらなくなってしまい、その不安を回避するために、舞華には必要以上にアレコレとうるさく口を出し続けていたような気がします」

 もちろん、その中には、「ゲームの時間が長いよ」「忘れ物はない?」といった親としては当然の注意や確認 も含まれていたが、どちらかといえば美香さんの場合は、舞華さんの生活のすべてを把握しないと落ち着かないという“症状”が顕著だったようだ。

 もちろん、志望校の選定も母の好みが優先。舞華さんが「共学がいいな」と言っても黙殺し、「私が一方的に『〇〇女学院がいいと思うわ』と決めてしまいました。 娘の意見に耳を傾けることは少なかった」と回想する。

「当時の自分に、心配性という自覚はなかったです。舞華のことを一番に考えているのは、母である私なのだから、自分が良かれと思ったことが、舞華にとっては一番いいと信じて疑ってなかったですね。今思えば、舞華が何かを言いかけても、それに被せるかのように自分の意見を押し付けて、黙らせていたように思います」

 舞華さんは、美香さんが勧めるままに女子校ばかりを数校受験する。

「本命中学校受験日の朝の電車内でも、舞華には何度も『絶対、大丈夫よ』『寒くない?』『緊張してない?』『受験票はある?』『頑張って!』などと言い続けていたようで、ついには舞華に『ママ、少し静かにして!』と叱られてしまいました。後でわかったんですが、それらの言葉がプレッシャーになって、余計に緊張したんだそうです」

 しかし、舞華さんは受験校すべてに合格し、その中で美香さんが憧れていた〇〇女学院に進学する。しかし、晴れて入学したにもかかわらず、ゴールデンウィークを境に舞華さんは不登校状態に陥ったという。

「もう、心配で心配で、当時の私は半狂乱でした。舞華に『いじめにあっているんじゃない?』『友人関係がうまくいっていないとか』 と何度も聞いたのですが、『学校も友人も好き。でも、なぜだかわからないけど、学校に行けない』と言うばかりで、途方に暮れました」

子どもを1人の人間として認めるってのも親の愛だよね
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