海外セレブコラム【後編】

ブリトニー・スピアーズにまつわる騒動を振り返る【後編】――後見人問題、「#FreeBritney」運動

2021/04/17 21:30
堀川樹里(ライター)

2016年:「後見人なんて必要なのか?」と疑問の声も

 ブリトニーのキャリアは絶好調で、13年から2年間の契約でラスベガスの定期公演を開始。大好評につき契約は更新され、17年末まで続いた。

 16年、ブリトニーは「精神不安定だから」と父親に制止されていたサムとの裁判に出廷。証言台に立ち、7年間にわたる裁判に決着をつけた。サムは、アルバムのプロモーション・インタビューで、きちんと受け答えしている彼女の記事を引用し「法廷でも証言できる」と抗弁。父親は「サムと一緒の部屋にいると取り乱すかもしれない」という理由でブリトニーの出廷を止めており、ファンの間では「もし、精神鑑定でブリトニーに裁判で証言できる一般的な判断能力があると評価されれば、後見人制度が外され、父親や弁護士たちは、彼女の資産や仕事をコントロールできなくなる」と注目された。

 裁判で証言したブリトニーは終始落ち着いており、このことに注目した米紙ニューヨーク・タイムズが、「彼女を後見人制度下に置く必要はあるのか」と疑問視する記事を掲載。彼女の自由を奪うことで、父親、マネジャー、弁護士、彼女の精神状態を診断する医師たちが、日本円にして何億円も稼いでいることを伝えた。

 後見人制度下に置かれてから、ブリトニーは4枚のアルバムをリリースし、ワールドツアーを3度も成功させ、オーディション番組などテレビ番組にも出演。

 ネット上で、「後見人なんて必要なのだろうか」「後見人が必要なほどの精神の人を、こんなに働かせてもよいのか」「父親やその取り巻きの弁護士やビジネスマネジャーたちが、ブリトニーを金づるにしているのではないか」と疑う声が上がるようになった。

2018~20年:「#FreeBritney」運動が活発に

 18年10月、ブリトニーは新たなライブパフォーマンス『ドミネーション』を引っ提げ、ラスベガスの定期公演に復帰することを発表。

 しかし、年末に父親ジェイミーが結腸破裂で緊急入院したことから、「看病のため」活動を休止すると発表。父親は回復に向かったが、「後見人制度下に置かれている人が後見人を看病するだなんて」と不思議がる声が上がった。

 そして、19年1月。ファストフード店「In-N-Out」に車を運転して行くところをパパラッチされた直後、ブリトニーは精神科病棟に入院。表舞台から姿を消した。

 ネット上では、「車の運転禁止命令」に違反したから、父親に無理やり入院させられたのではないかと懸念する声が上がり、ブリトニーを後見人制度から解放してほしいと声を上げる「#FreeBritney」運動が巻き起こった。マイリー・サイラスなど多くのセレブたちがこの運動に参加し、世間の注目を集めた。

 なお、父親の入院を機に、後見人は長年ブリトニーのマネジャーの1人として働いてきたジョディ・モンゴメリーに一時変更されていたが、19年9月「回復した」として父親が後見人に復帰した。

 20年夏、ブリトニーは「父ジェイミーが単独で後見人を務めることに断固反対する」「ジョディを後見人にしてほしい」と裁判所に申請。その後、父親が財産を不正運用しないように、信託会社を共同後見人につけることに成功した。

 ファンは、「父親が後見人を務める限り歌手活動は行わないと決心したのだろう」と推測。以後、ブリトニーのインスタグラム投稿を見て、「助けを求めるメッセージだ!」とネット上で大盛り上がりするようになり、「#FreeBritney」運動はさらに活発化していった。

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