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Kōki,はなぜ中国アイドルオーディション番組の講師に選ばれたか? 多様な文化が混ざり合って急速に発展している中国アイドルシーンに注目!

2021/03/07 20:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 中国のアイドルオーディション番組『創造営2021』(WeTVで配信中)に、スペシャルメンター(特別講師)としてKōki,こと木村光希が出演した。

 中国では2018年から、韓国のTV局・Mnetが製作した『PRODUCE 101』(通称“プデュ”)シリーズのフォーマットを模したオーディション番組がブームとなっており、この『創造』シリーズも“中国版プデュ”の一環として若者層を中心に支持を集めている(なお2019年には日本でも“日プ”こと『PRODUCE 101 JAPAN』が製作され、そこから誕生した男性グループJO1が活躍中)。

 2月よりスタートした『創造営2021』第1回の再生回数は、配信開始から19時間で6000万回再生を突破したことからも、その絶大な人気ぶりがうかがえるだろう。

 2018年にモデルとして活動を開始したKōki,は中国のファッション誌「時尚芭莎」で表紙を飾ったほか、元EXOメンバー・クリスこと呉亦凡の楽曲MVに出演したり、メンソレータムの中国エリアにおけるイメージキャラクターを務めるなど、中国の芸能界でも活躍をみせている。父親の木村拓哉も中国で最も名の知れた日本の芸能人のひとりだが、Kōki,自身の知名度も高い。

 そうした背景もあり、人気番組『創造営』に彼女が出演するというニュースは中国のSNS・微博(Weibo)でも多くの関心が寄せられていた。

 Kōki,が特別講師に招かれた背景には、中国内における知名度の高さの他にも“国際的に活躍する芸能人”を起用するという製作側の意図が見受けられる。そしてそれは、この『創造営2021』で図られる“試み”に結びついているように思う。

 2018年から製作されてきた数々のオーディション番組は中国でムーブメントを巻き起こし、国内におけるアイドル人気の火付け役となってきたことは先述のとおりである。ここ数年で急速な盛り上がりをみせ発展が遂げられている中国アイドルシーンで、各オーディション番組は毎シーズンごとに新たな試みを図っている。

 昨年放送された『青春有你2』(iQIYIで配信)では、既存のガールズグループの枠組みに囚われない無限の可能性を表す「X」がテーマとして掲げられ、そこからデビューしたTHE9は新時代ガールズグループとして日本でも注目を集めている。

 また同じく昨年製作された『乘風破浪的姐姐』は、TWICEの先輩グループにあたるmiss Aのメンバー・フェイこと王霏霏など、30歳以上の女性芸能人30人から新アイドルグループのデビューメンバーを選抜するという内容が話題となった。

 そしてこの『創造営2021』に掲げられるテーマは、講師陣や参加者たちの顔ぶれから察することができる。

 参加者のパフォーマンス指導にあたる講師陣には、中国の代表的な女優であり歌手の寧静や、中国映画の興業収入記録を打ち立てた『人魚姫』などの主演で知られる鄧超など主に国内で大きな支持を受ける著名人のほかにも、K-POPグループf(x)の・アンバーこと劉逸雲(台湾系アメリカ人)や、韓国の芸能事務所・JYPエンターテイメントの練習生を経て『創造営2019』からデビューしたR1SEメンバーの周震南ら、中国外での芸能活動を経験した面々が並ぶ。

 また前回の『創造営2020』からデビューした硬糖少女303メンバーで、タイ出身のneneが海外練習生アシスタントとして参加しているあたりから汲み取れるのは、“中国発のグローバルアイドルグループの結成”を目なざすといった番組主旨だ。

 実際に『創造営2021』にはアメリカやタイ、ロシア、ウクライナ、台湾など様々な地域から“学員”と称される参加者たちが一堂に会し、番組内には多言語が飛び交っている。

 特に日本からは参加人数90名のうち17名と過去に類をみないほど多くの学員が集っており、元“日プ”参加者でRBW JAPAN練習生の井汲大翔や田口馨也、avex所属グループ・INTERSECTIONメンバーのミッチェル和馬、橋爪ミカ、モリアティー慶怜など、その顔ぶれの多様さも話題だ。

 そのうちの一人、元ジャニーズJr.の羽生田挙武が『創造営2021』で披露した吉川晃司「モニカ」のパフォーマンス動画は、日本だけでなく中国の視聴者からも大きな反響が寄せられた。同楽曲は香港のスター、レスリー・チャンがカバーしヒットしたことで、中国内でも人気ナンバーとなっている。

 またストリートダンスの世界王者でありSHINee・テミンのバックダンサー経験のあるSANTAと、BoAやSHINeeなどの振付を担当したRIKIMARUの圧倒的なダンスパフォーマンスは、番組序盤のハイライトの一つとなった。

 そんななかでも目を引いたのは、国内外で数多の舞台を踏んできた二人と他の学員たちが互いに及ぼし合う文化的な影響だ。

 特に中国の伝統舞踊を専門とするダンサーの刘宇(リウ・ユー)は、彼らのパフォーマンスを見て「興奮した。(自分も)彼らのように、皆から好かれて楽しませるダンスをしたい」と語り、また刘宇らのパフォーマンスに対しSANTAも「フォーメーションが面白い!」「自国の文化をしっかり守っているところが素敵」と畏敬の念を表した。

 伝統芸能とモダン、互いの異なるダンススタイルに刺激を受け合った刘宇とSANTAは、講師陣のリクエストにより舞台上でコラボレーションを果たす。

 即興にも関わらず、見事に呼吸の合った両者のパフォーマンスは会場からの大喝采を受け、講師の周震南からは「ダンスバトルというよりも、それぞれが自分のスタイルを守りながらしっかりと融合していた」と感嘆の声が上がっていた。

 初回の撮影を終えたRBW JAPAN練習生・隅田隼平が「その国に合わせるというよりも、それぞれの生まれ育った異なる環境を尊重してお互いに歩み寄ることの大切さを感じました。それはとても難しい挑戦になると思いますが、(このオーディションから輩出される)グループだけの魅力になる気がしています」と語ったように、この『創造営2021』における会場全体の光景は、これまでにない新たな何かが生まれる予感さえ感じさせるものだった。

 今後も、それぞれ異なるバックグラウンドをもった学員たちが一つのチームを組んで臨むステージが用意されている『創造営2021』。そこで起こる文化的な化学反応に要注目だ。

(菅原史稀)

 

最終更新:2021/03/07 20:00
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