[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

韓国映画『国家が破産する日』が描く、20年前の経済危機と壊れた日常――終わらない格差と不信

2020/04/24 19:00
崔盛旭

近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。しかし作品の根底にある国民性・価値観の理解にまでは至っていないのではないだろうか。このコラムでは韓国映画を通じて韓国近現代史を振り返り、社会として抱える問題、日本へのまなざし、価値観の変化を学んでみたい。

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 日本では新型コロナウイルスの終息のめどすら立っていないが、世界的には以前から懸念されていた経済への打撃がいよいよ具現化してきた。先日は、石油価格が大幅に下落。また各国は国民の生活補償として巨額の支出を行っているため、“コロナ後”にはどの国も切迫した財政状況になるだろう。

 “国家の破産”――信じられないことだが、これは1997年、韓国が現実に経験したIMF通貨危機という歴史的出来事を指している。日本でも学校の授業で聞いたことくらいはあるだろう。実際には、IMF(国際通貨基金:国際金融、為替相場の安定化のための機関)の介入によって破産は免れたものの、韓国の経済と社会は大打撃を受け、国民の多くがその後の生き方を変えざるを得なくなった。今回はそんな20年以上前の歴史を題材にした『国家が破産する日』(チェ・グクヒ監督、2018)を取り上げてみたい。

≪物語≫

 OECD(経済協力開発機構)への加盟を実現し、ついに先進国への仲間入りを果たしたと国全体が浮かれていた1997年の韓国。しかし水面下では経済破綻が確実に迫っていた。通貨危機の兆しを察した韓国の中央銀行「韓国銀行」の通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)は上司に報告、政府は遅ればせながら国家の破産を防ぐべく、密かに対策チームを立ち上げる。一方、独自の分析で状況を把握した金融コンサルタントのユン・ジョンハク(ユ・アイン)は会社を辞め、危機こそチャンスと主張し、投資家たちを集める。そんな社会の動向を知るすべもない町工場の社長ガプス(ホ・ジュノ)は、大手デパートとの大口契約締結に大喜び、現金ではなく手形取引であることに一抹の不安を抱きつつも事業の拡大に乗り出す。対策チームでは、危機にどう取り組むべきかをめぐり、シヒョンと財務局次官パク・デヨン(チョ・ウジン)が激しく対立する。反対するシヒョンを振り切ってデヨンは強引にIMFへ救済を要請。専務理事(ヴァンサン・カッセル)が交渉のために来韓し、韓国の運命はIMFの手に委ねられる……。

(c)2018 ZIP CINEMA, CJ ENM CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

 物語自体は決して難しくはないのだが、専門用語が盛り込まれた台詞がスピーディーに交わされるので、理解を深めるために、まずはこの歴史的事件について細かく振り返っておこう。

 映画でも描かれているように、事の発端は東南アジア諸国の経済危機にあった。東南アジアの経済が悪化し、その延長として外国人投資家たちは韓国経済にも危機を覚え、資本回収に着手したのだ。この事態によって韓国では直ちに為替の暴騰と株の暴落が発生し、企業に致命的な打撃を与えた。中でも、外国資本に頼って事業を拡大してきた企業にとっては、死亡宣告も同然だった。その代表例が、映画にも出てくるハンボグループの破産である。しかもこのグループは、事業に関する意思決定の90%を占いに頼ってきたという信じがたい実態まで明らかになり、世界の笑いものになった。

 だが韓国の金融危機は、それだけが原因ではない。映画でははっきりと語られないものの、軍事独裁政権時代から平然と行われてきた、政治と経済の癒着という韓国の「体質」が招いた側面も大きいのだ。企業は独裁権力に賄賂を渡し、政権はその見返りとして、企業が借りたい放題で銀行から融資を受けられるといった利権を与えた。企業はその利権を利用して銀行から莫大な融資を受け、その一部をまた政権に還元する。この悪循環の構造に安住してきた韓国の体質そのものが、しまいには自らを経済破綻の危機に追い詰めたのである。

 金泳三(キム・ヨンサム)政権は、長い軍事独裁後に発足した、国民が待ちに待った民間による政権(いわゆる「文民政府」)だったが、上述した悪循環を断ち切ることはできなかった。ハンボグループから莫大な賄賂を受け取ってグループへの利権を手回ししたのは、ほかでもない金泳三の息子、金賢哲(キム・ヒョンチョル)だったのだから。彼はハンボ破産の責任を問われて逮捕され、韓国社会に大きなショックを与えた。政経癒着という誘惑には、文民政府でも打ち勝てなかったというわけだ。以前、『パラサイト』を取り上げたコラムでも書いた「韓国型賎民資本主義」の当然の帰結と言えるかもしれない。

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