ドラマレビュー

佐藤健、『半分、青い。』律役と『義母と娘のブルース』麦田役で光った「静と動」

2018/10/15 21:00

 賛否を呼んだ連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)が終了した。昭和末期から平成中頃という近過去を舞台にした本作は、1970年代生まれ向けの“新しい朝ドラ”として大きく注目された。ヒロイン・鈴愛の性格をはじめ、時間軸がポンポン飛んでいくこと、そして脚本家・北川悦吏子によるSNSでの積極的な発言など、物議を醸した問題作だったが、それでも最後まで盛り上がっていたのは、次から次へと登場するイケメンたちが魅力的だったからだろう。

 偏屈な少女漫画家・秋風羽織を演じた豊川悦司は再評価され、中村倫也、志尊淳、間宮祥太朗といった若手イケメン俳優たちは、カッコいいけど困ったところのある愛すべき男たちを好演した。中でも、最も重要な存在が、鈴愛の幼なじみで最後に結ばれることになる萩尾律(佐藤健)である。

 律は鈴愛と同じ日に同じ病院で生まれた幼なじみ。いつも鈴愛を心配していて、困ったときはすぐ助けに来てくれるという、少女漫画に出てきそうな理想の男の子だが、鈴愛も律も定期的に別の恋人をつくる点には驚いた。全話見終えた今となっては、収まるところに収まったという感じがするものの、当初は鈴愛と律がどうなるのか予測もつかなかった。いや、正確に言うと途中までは、「どうせ結婚するんだろう」と思っていたが、物語の途中で律が鈴愛にプロポーズした後に振られて、数年後に別の女性と結婚するという展開に。その後、鈴愛は涼次(間宮)と結婚した後に離婚し、同じく離婚した律と会社を立ち上げることになるのだが、文字通り紆余曲折の展開だった。

 そんな律を演じた佐藤健は29歳。高校生役を演じると知った時は心配だったが、もともと童顔で少年性が強い俳優であることもあってか、高校時代を難なく演じ、実年齢を追い越して30代となっても違和感がなかった。ポーカーフェイスで、一見すると何を考えているかわからないが、鈴愛に対する激しい気持ちを内に秘めている律は、佐藤が最も得意とするところで、集大成とも言える役柄だった。

『仮面ライダー電王』で身につけた動と静

 佐藤が大きく注目されたのは、2007年に放送された『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)だ。佐藤演じる野上良太郎は、“イマジン”といわれる怪物の力で戦う仮面ライダー電王である。良太郎には4体のイマジンが幽霊のように取り憑いていて、彼らが憑依すると良太郎の性格も変化する。普段の良太郎はナヨナヨとした気弱な男の子なのに、憑依されると男らしくなったり、軽薄になったりと違う性格に変化する。声こそイマジンを演じる声優のものだが、体の動きは佐藤の演技で、その都度、多重人格者のように違うキャラクターを演じていたことになる。

 当時は演技経験の少ない若手だったが、高校時代にダンスを習っていたこともあり、動きのキレは抜群だった。ダイナミックなアクションと、優しい男の繊細な内面表現という「動」と「静」、2つの演技をいかんなく発揮し、この二面性は佐藤の大きな基盤となっていく。

 激しい演技は、時代劇映画『るろうに剣心』や、死なない体をもった青年を演じた『亜人』で磨きがかかり、佐藤はスタントなしでアクションシーンを演じている。繊細な内面を抱えたナイーブな少年役は『Q10』(日本テレビ系)を筆頭に、さまざまな作品で見られ、佐藤のパブリックイメージでもある。そして、『半分、青い。』の律は、今まで演じてきた少年像の集大成と言える存在だった。

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