【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

夫の浮気が原因で離婚、慰謝料200万円で料理学校へ。出産後に直面した男女平等のウソ

2018/08/22 15:00

彼の中で息子は幼児のまま。別れたときから時間が止まっている

――もう復縁しないと、子どももわかっていくわけですよね。その後、お子さんは父親との面会について、何か話していましたか?

 最近は「休みの日は友達と遊びたい。パパんちに行くと、小さい子ども向けのおもちゃとか用意してくれるけど、俺、もうそういうんじゃねえんだよ。お絵かきなんかしてるより、ヒップホップ聞きたいし、映画だって、ピクサーじゃなくて、もうマーベルなんだよ」って。なのに彼の中で、息子は幼児のまま。別れたときから時間が止まっているんです。

――その後、元夫は?

 離婚のきっかけになった女の人は、私たちがモメてる間に子どもを産んだそうで、結局、彼とは別れました。その後、別の女とデキてしまったらしく、今から、3〜4年前、子どもが小学校に入ってちょっとしたあたりで、彼が別の女の人と住むらしいという話を子どもづてに聞きました。

 実際、彼にメールで確認すると、「ありがたいことに、僕にもパートナーができまして。これからも変わらずに面会はさせてください」と返事がありました。しばらくは、子どもと彼との関係は維持されていたんですが、去年、彼と新しい妻の間に子どもが生まれてからは、関係性が変わっていきました。すると、うちの子も気を使うわけですよ。「俺、行っていいの?」って。

――相手が新しいパートナーとの間に子どもが生まれたりすると、彼の気持ちが自分の子どもから離れていく。そういうのを感じたりしましたか?

 以前は、私が「今月忙しいようなので、面会は~」みたいな感じで、うちの子と会わせないようにすると、彼は懇願するように「会いたいんです。会いたいんです」みたいなメールを、すごくたくさん送ってきてた。ところが、後妻との間に赤ちゃんができてからは、そうしたメールがぱったり来なくなった。だから「あ、もういいんだ、子どもは1人いればいいんだ」みたいな感じです。

――そんなものなんですか……。寂しい限りです。ところで、今はライターとして結構あちこちで活躍されていると。

 活躍してるかどうかはわからないですけど、私が子どもを産んだ後に失ってしまったものを、今とにかく穴埋めしている。全世界に負けている、全世界から外れてしまったという感覚だったのを、とりあえず今取り戻しています。

――子どもを連れて離婚するという体験は、山下さんにとってどんな体験だったんですか?

 大学まで同じで男女平等だと思ってたのに、そこから先が男女でこれだけ違うのかっていうことは、身をもって体験しました。昨年はすごく働いて格差がないぐらいまで稼げたかなと思ったら、それだけ税金で引かれる。女の人が1人で子育てしながら働いていくっていうのは大変ですよね。働いて結婚して子どもを産んで、男女平等というのは難しいです。

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 同業者として、山下さんのことを応援したい。一方、同性として元夫の再婚後の振る舞いには、寂しさを感じざるを得なかった。そういうもの、なのだろうか?

西牟田 靖(にしむた やすし)
1970年大阪生まれ。神戸学院大学卒。旅行や近代史、蔵書に事件と守備範囲の広いフリーライター。近年は家族問題をテーマに活動中。著書に『僕の見た「大日本帝国」』『誰も国境を知らない』『〈日本國〉から来た日本人』『本で床は抜けるのか』など。最新巻は18人の父親に話を聞いた『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)。数年前に離婚を経験、わが子と離れて暮らす当事者でもある。

最終更新:2018/08/22 15:00
わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち
子どもにとってお父さんであることには変わりないのに
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