[女性誌速攻レビュー] 「Ray」11月号

涙袋のきらめきに踊らされる男心を説く、「Ray」メイク特集で得るべきものとは

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「Ray」2012年11月号/主婦の友社

 皆さんは「Ray」(主婦の友社)の看板モデルを、女優の香里奈が務めていることをご存知ですか? 以前から、「Ray」の表紙で香里奈がほほえんでいることについて、ちょっとした疑問を抱いていました。果たして、香里奈は「Ray」になじんでいるのだろうか? と。なぜ、そんなことを考えてしまうのかといえば、ドラマで見る香里奈が、「No.1キャバ嬢の高校教師」「ファッションやコスメに無頓着な独身女」「土木技術士」「『ラッセル』というあだ名の刑事」など、まったくもってモテからは程遠いキャラばかり演じているから。可愛いだけでは生きていけないことを体現するかのような香里奈の役どころは、彼氏に可愛がられるキャピキャピした女の子像を提唱し続ける「Ray」にとって、最もその存在を否定されるべきポジションなのではないでしょうか。

 そんな自分と「Ray」のズレを察知してか、香里奈は巻頭のインタビューで、次のように語っていました。「私はモデルをやめようとは思わない。モデルをやめるって想像できないし、全然考えたことない」。三十路間近の香里奈が、「どかねぇぞ」と堂々のお局宣言です! どれだけ「旅のお供は大好きな花柄ワンピ」「(マフラーやストールを巻いた時の)『守られてる感』にやみつきなんです(はぁと)」「白マジックで可愛さ120%」と「Ray」に寄り添う発言をしても、その必死さが、逆にお局っぽい……。月9ヒロインをも、「上がっちゃった女」に見せてしまう「Ray」を、今回はお局様目線で読んでいきましょう。

<トピック>
◎10月の恋とおしゃれ(はぁと)Dreaming Story
◎スカート派(はぁと)泉里香VSパンツ派★美優おしゃれ女王はどちら?
◎愛されガール15人のほめられメイク再現SHOW

■黙殺された「かっこいい」という概念

 どの女性誌においても必ずと言っていいほど対立する、スカート派とパンツ派。今号は「Ray」にも、「スカート派(はぁと)泉里香VSパンツ派★美優おしゃれ女王はどちら?」という特集がありました。

 扉ページには、スカート派の読者から「やっぱり『ここぞ』ってときはミニスカート。自分がいちばん可愛く見える気がする(笑)。」、パンツ派の読者から「狙ってない感じがするみたいで、男のコウケがいい!」と、当たり前のように「男目線が私の判断基準」といった発言が踊ります。ほかの20代向けの女性誌では、同性ウケファッションが盛んに取り上げられ、「男に媚びるだけの女は痛い」と喧伝されているのに……。保守派と見られがちな「Ray」が秘める時流への反抗心が、誌面からひしひしと伝わってきます。

 それを顕著に表しているのが、パンツスタイルの扱われ方。通常、「スカート派=可愛い系」「パンツ派=かっこいい系」と定義づけられるところなのですが、「Ray」におけるパンツとは「可愛い」をアップデートできるアイテム。「Ray」では、「スカート派=天然可愛い」「パンツ派=小悪魔可愛い」と、「自分が可愛いことに、無意識か否か」が、この2スタイルの違いになっているのです。「えっ、じゃあ、私はスカート派……かな?」などと言って、「私は自分のこと可愛いと思ってません」アピールをする読者がいたら、「モンペでも穿いてな!」と言わずにはおれませんが、結局何を穿いたって、可愛いしか道がないのです。そして、行き着く先には、きっと大好きなカレが両手を広げて待っているのでしょう。

 男に自分がどう扱われたいかでファッションを着こなすという、「Ray」ファッションの真理。どこからか、「舐めてんじゃねーぞ!」というお局陣からの叱咤の言葉が聞こえてきそうです。「どんなに可愛い子でも老いてゆく。そんな時、男から決められた価値だけで生きてきた女は、ひどく苦しむものなのだ」という老婆心からの言葉を、唾を飛び散らせながら伝えたくなるものですが、健気に可愛いを追い求める「Ray」読者を見ていると、思わず口をつぐんでしまいます。だって、人生で一番男に求められ、それを心から楽しんでいる女の子に、「男と婚約破棄をして以来、スカートとパンプスを捨てた」ピンクスーツでおなじみの政治家・井脇ノブ子イズムを強要するなんて酷なこと、私にはできない! 「Ray」の愛されたいという一途さは、お局の良心さえもくすぐるのです。

■オカン心をわしづかみにする「Ray」

 毎回何かしら特集が組まれるメイク企画ですが、今号は、「愛されガール15人のほめられメイク再現SHOW」という、怒涛のモテエピソードがふんだんに散りばめられたページが。単に可愛くなるためではなく、どうやって愛されるかを視野に入れてメイクを施すわけです。そこに、お局メイクの「とりあえず、この土気色した顔とでっかいシミをカバーできるファンデ持ってこいや!」といったガサツさはありません。マスカラで丁寧に塗り上げられたまつ毛一本にも、カレに愛されるための戦略が秘められているんですね!

 青山学院大学の女子大学生は、涙袋ラメで作ったうるうる瞳のメイク法と共に、こんなエピソードを紹介していました。「仲よしの男女6人組で遊んだ帰り。さっきまで一緒だった男友達から電話が『どうしても今伝えたいことがある……』と突然の告白。彼いわく『今日あまりにも可愛かったから、いわずにいられなかった』んだって」。涙袋にラメパウダーを乗せることで、潤んだ瞳を作り出し、無意識のうちに男友達をドキっとさせるなんて、なかなかの策士。しかし、深読み上手なお局は、「涙袋ひとつに踊らされる男の滑稽さ」「男女の友情を掲げる大学生グループの浅はかさ」そして「きっとこの交際が引き金となり、そう遠くない未来に訪れるだろうグループ解体の予感」こそが、このメイクの隠し味になっていることに気付かずにはいられません。

 しかしまぁ、肝心要のメイク方法を紹介する写真が、小さいこと小さいこと。モデルたちの決め顔と、エピソードばかりが大きく扱われるために、実際にやってみようという気にならないのが惜しいところです。「Ray」読者にとってこのページは、実践というより、愛され妄想をたくましくするためのものかも。だって、メイクで可愛くなるだけなら、技術を磨けばどうとでもなりますが、「Ray」読者が目指しているのは、その先にある、愛されること。だから、技術ではなく、確固たる愛されイメージを自分の中で作り上げる方が大切なのです。「愛されるぞ! 愛されるぞ! 愛されるぞ!」と念仏を唱える女子大生の姿が目に浮かぶようです。

 どうして彼女たちはこんなにも愛されたいのか……? 単純に「スイーツウザい(笑)」などと斬っては捨てられない、強烈な思いを感じてしまいます。お局のオカン心をわしづかみにした、今月号の「Ray」でした。
(豊島ユイ)

先月号に引き続き、どっピンクの表紙でお送りしました

しぃちゃん

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