“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験生の母を悩ます「勉強嫌いな弟」、姉は医学部に強い私立に合格したのに!

2023/11/25 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

中学受験は「上の子と同じようにはならない」のが普通

 そんな雅子さんから、筆者は「どうしたら勉強してくれるのか?」という相談を受けた。小手先のテクニックで良ければ多少はあるが、当然ながら、彼女の悩みを根本から解決できるような答えの持ち合わせはない。 中学受験生の親の悩みのベスト1は「やる気がない」。しかし、これを親が解決するのは相当難しいのだ。よく言われることわざのように「馬を水辺に連れていくことはできても、馬に水を飲ませることはできない」からである。こればかりは、本人のモチベーション次第。そもそも論として、勉強は親が子どもにお願いして“やっていただくのもの”ではないだろう。

 また雅子さんから「偏差値が低くても、お得な学校はどこか?」とも聞かれたが、これも非常によく頂戴する質問だ。お得な学校とは、「入り口偏差値は低いけれど、大学合格実績が良い学校」という意味だろう。しかし、中高一貫校は偏差値ではなく、校風と理念で選ぶべきもの。この質問が浮かぶ親御さんは、ほぼほぼ「中学受験迷子」になっているので、今一度、「なぜ中学受験をしたいのか?」という原点に返るほうが解決への道のりが早くなると思う。

 そもそも雅子さんの話を聞くに、彼女の本当の悩みは「なぜ長女の時のようにスムーズに進まないのか?」ではないだろうか。

 というのも、兄または姉で一度中学受験を経験し、しかも、それが成功体験であった場合、親は「下の子の受験はある程度余裕を持って臨める」と思いがちだが、ふたを開けたら「めちゃくちゃ大変」「兄や姉の時の比ではない」という親の声は多いのだ。

 きょうだいといえども、別人格。親にとって、受験システム的な慣れはあるだろうが、その子にとっては“初めまして”の中学受験。上の子と同じようにはならないのが普通なのである。そのことを最初から理解している親からは、「どうしたら勉強してくれるのか?」という悩みはあまり聞かない印象もあるのだ。

 現在、「勉強は嫌いだけど、塾は好き」という長男に根負けしたかのように、「全部落ちたら、公立でいい。塾で少しは勉強してるんだから、行かないよりもマシ」という境地に達してしまっているという雅子さん。

 しかし、雅子さん親子の場合は受験本番までは、まだ1年以上もある。長女の中学受験は一旦脳内から消して、まずは、学校をいろいろと見ながら、長男の長所が伸びていくと思われる志望校を選ぶということが、「親子で楽しい中学受験」のキッカケになるような気がしている。



鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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最終更新:2023/11/25 16:00
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