オンナ万引きGメン日誌

高校中退の万引き少年の母「あんたに、なにがわかるのよ!」――Gメンに絶叫したワケ

2023/02/18 16:00
澄江(保安員)

突然に泣き始めた万引き少年の母親が、Gメンの腕を掴んで絶叫

 これが精一杯だったのでしょう。頭を下げることなく、口先だけで謝った少年は、まもなく警察署に連れて行かれました。逮捕者である私も調書作成のために同行を求められ、少年の母親と同じ車に乗って警察署に向かいます。

 あまり関わりたくないのが本音ですが、その車中で母親から話しかけられたので、やむなく対応します。

「ご迷惑おかけして、すみません」
「いえいえ。難しい年頃だから、お母さんも心配ですよね」
「前にも何度か同じことをしていて、高校もやめさせられているんですよ。それから家に寄りつかなくなって、おばあちゃんのところで寝泊まりさせてもらっているんですけど、あまり仕事にも行ってないみたいで。どうやったら、やめてくれますかね?」
「お母さんが見捨てたらダメだと思います。もしかしたら、本当は学校に行きたいんじゃないですかね? さっき、実況見分しているところを中学の同級生に見られたって、すごく悲しそうにしていて、かわいそうでしたよ」

 すると、突然に泣き始めた母親が、私の腕をつかんで言いました。

「あんたに、なにがわかるのよ! あんたに、なにがわかるのよ! うあーん」

 余計なことを言ってしまったようで、ひどく気まずい思いをしましたが、まもなく警察署に到着して救われました。

 その晩、調べを終えて少年課を出ていく2人の背中を見送った私は、子どもを産むことなく終盤を迎えた自分の人生について振り返った次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)



澄江(保安員)

澄江(保安員)

万引きGメン(保安員)歴40年以上。スーパーで品出しのパートをしている時に、万引き犯を捕まえたことがきっかけで、この世界に。現在も週5日は現場に立っている。

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最終更新:2023/02/18 16:00
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