芸能
崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

大泉洋ら出演『焼肉ドラゴン』から学ぶ「在日コリアン」の歴史――“残酷な物語”に横たわる2つの事件とは

2021/05/07 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

 『ミナリ』で取り上げたアメリカ移民「在米韓国人」に対して、日本にも大勢の「在日コリアン」が暮らしている。その呼び名は、それぞれの立場や信念、国籍などによって「在日朝鮮人」「在日韓国人」「在日コリアン」とさまざまだが、当コラムでは、韓国や朝鮮といった切り分けを乗り越えようと使われ始めた「在日コリアン」と表記する。だが一般的には「在日」と略して呼ばれることが多く、日本に住まう(=在日)外国人はほかにもたくさんいるにもかかわらず、「在日=在日コリアン」という等式が成り立っているのも確かだ。それはやはり、「帝国/植民地」という特殊な歴史的事情が絡んでいるからであろう。

 1910年の韓国併合から45年の日本の敗戦までの植民地時代、大勢の朝鮮人がさまざまな理由から海を渡って日本にやってきた。朝鮮総督府の土地調査により、住む場所を失った農民が日本に出稼ぎにやってきたり、労働者徴用の政策によって炭鉱や工場に送られたり、戦争末期には日本軍として徴兵されるなど、敗戦直後の時点でその数は約200万人にも上っていたという。そのうち約140万人は朝鮮に帰っていったのだが、日本に生活の根を下ろしていた人、帰る場所をなくした人、帰国船が出る場所までの交通費すら用意できずに帰る機会を逃した人まで、これまたあらゆる理由から、約60万人は日本にとどまることになった。さらに一度は帰国しても、その後の南北分断や朝鮮戦争といった混乱に巻き込まれて舞い戻った人々も含めて、戦後の「在日コリアン」が形成されていったのである。

 だが、日本に支配されていた時代から解放され、朝鮮の言葉や歴史など、民族教育を訴えつつ日本人と対等な立場に立とうとする朝鮮人たちを、日本政府は文字通り「厄介者」扱いした。47年に実施された「外国人登録令」は、対象となる約64万人の在日外国人のうち朝鮮人が60万人ほどを占めており、実質的には朝鮮人を日本社会から排除・管理するための法であった。

 その後、65年の日韓基本条約によって在日コリアンの日本居住が認められたものの、納税などの義務は日本人と同じく課される一方で、戦争被害に対する請求権の対象から外されたり、就職や教育における理不尽な差別に対する闘いを余儀なくされるなど、マイノリティーとして共存を模索しながら現在に至っている。

 今の日本人にとっては大差ないように見えるかもしれないが、一般的に、65年の日韓基本条約を境に、それ以前から日本に暮らしている朝鮮人はオールド・カマーの「在日コリアン」、それ以後に日本にやってきた朝鮮人はニュー・カマーの「移民」と分かれており、在日コリアンは私のような留学生から「一般永住者」になった移民とは明らかに異なる歴史的文脈を持っている。

 その意味では、『ミナリ』からの流れで『焼肉ドラゴン』を取り上げたとはいえ、在日コリアンは正確には「移民」ではない。では、在日コリアンの歴史的文脈とはどのようなものだろうか? 『焼肉ドラゴン』を手掛かりに見ていこう。

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