コラム
「元極妻」芳子姐さんのつぶやき103

ヤクザの数は過去最小、半グレの検挙数は過去最多! 元極妻が考える貧困と居場所

2021/04/11 16:00
待田芳子(作家)

「怒羅権が誕生したときに暴走族になりたかったわけではないように、ヤクザになりたいわけではありませんでした。しかし、組事務所には温かい食事があり、ベッドがあって、組員には『寝るところがなければ遊びに来い』と誘われます。当時、盗みをして得た金でサウナに泊まることが唯一の幸せだったような私ですから、布団の上で眠れるというのは幸福で、出入りするうちに仕事が与えられるようになり、部屋住みという形になったのです」

 汪さんはこう明かしています。事務所には、当時流行していたコンピューター・ゲーム機の「ファミコン」(ファミリーコンピュータ)もあったそうです。

 つまり組事務所とは、「普通のおうちにあるもの」がない子たち、家にいられない子たちの「居場所」でもあるのです。

 田岡一雄組長率いる三代目山口組の事務所も、戦後の混乱期にもかかわらず食事を出すことで知られていて、組員でもないのにおなかをすかせた若者が絶えず来ていたそうです。姐さんは大変ですけどね。

 戦後の混乱期も、1972年生まれの汪さんの子ども時代も、さらには今も、組事務所は「居場所」です。組や組事務所がなければ、半グレに流れるだけです。

 一方で、汪さんが更生できたのは、育ちがいいからだとも思います。テレビでインタビューを拝見しましたが、日本語もほぼ完璧です。

 本当の「恵まれない家庭環境」で育ったら、汪さんのようにはいきません。「悪い子」のまま大人になって、犯罪にも手を染めます。元極妻として、そんな人をたくさん見てきました。過剰な暴排によってヤクザはこれからも減り続け、抗争事件も減るでしょうが、半グレのグループに参加する居場所のない若者は増えるでしょう。そして、お年寄りを狙った詐欺や強盗は増えていくのです。

待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻。夫とは死別。本名・出身地もろもろ非公開。自他共に認める癒やし系。著書に『極姐2.0 旦那の真珠は痛いだけ』(徳間書店)がある。

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最終更新:2021/04/11 16:00
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