仁科友里「女のための有名人深読み週報」

花田優一「来年は絶対に紅白に出る」宣言! 彼の「底の浅さ」と「へこたれなさ」が生きるテレビ番組とは?

2020/12/24 21:00
仁科友里(ライター)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「来年は絶対に紅白に出る」花田優一
(花田優一オフィシャルブログ、12月19日)

 剣劇女優・浅香光代さんが亡くなったニュースを見ていたら、その昔、「熟女に怒られる番組」が多かったことを思い出した。デヴィ夫人、野村沙知代さん、淡路恵子さんなど波瀾万丈な人生を送ってきた女性陣が人生相談に乗り、相談者(ほとんどが女性)を怒るという内容だった。相談者は最初、ふてぶてしく振る舞うが、熟女に怒られるうちに「本当にそうだ」と改心し、謝罪する。そして「あんた、がんばんなさいよ」と熟女が励ましてめでたしめでたし。同じようなパターンの番組はいくつかあったから、それなりに視聴率を取っていたのではないだろうか。

 しかし、今、こういう番組はできないのではないかと思う。前回、この連載のフワちゃんの回で触れたが、自分に非があっても怒られると逆ギレ的な反応を示す若手タレントも出てきている中、説教する側が視聴者からパワハラだと指摘され、エンタメにならないかもしれない。また、お説教をショーにするのなら、説教と反論のラリーがある程度続かないと面白くない。つまり、説教する側とされる側が同じくらい弁が立つことが条件となる。年寄りと対等にケンカショーをするのなら、よっぽど口がうまくないといけないだろう。怒られる側に知名度も必要である。

 世間から「怒られて当然」と思われていて、知名度があり、ちょっと怒られたくらいでへこたれない人物(怒られたほうが泣いたりしたら、それこそいじめっぽい)……そんな人はもういないだろうと思ったが、見つけた、花田優一である。

 平成の大横綱・貴乃花と女子アナブームの立役者・河野景子の間に生まれた優一。母譲りなのか弁が立ち、選んだ仕事が実直な靴職人であることも印象がよかった。2018年放送の『アナザースカイ』(日本テレビ系)で、靴の職人修行をしていたイタリア・フィレンツェを訪れた優一は、「日本に帰ったけど、今でも自分はアンジェロの弟子です」と師弟愛をアピール。貴乃花も実の父である師匠を尊敬していたことはよく知られているだけに、優一に貴乃花の姿を重ね合わせた人も多いだろう。

 そんな優一は工房を構え、オーダーを受けて靴を作っていたが、19年1月、「女性自身」(光文社)に、靴の代金を受け取っておきながら、納期を守らないと報じられる。約束は守るのがビジネスの基本なので、批判が噴出する中、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)に出演した優一は、火に油を注いでしまう。「報道されてる方とかは、世界中の有名なブランドのオーダーシューズを調べていただきたい」「手作りのものは時間がかかる。平面的なものを立体にするって時間がかかるんです」と反論したからだ。

 手作りで時間がかかるなら、それを加味して納期を設定すればいいだけでは? と思うが、優一がケンカショー向きたるゆえんは、この“明らかな自分の落度を、浅い屁理屈で返すところ”ではないだろうか。なんせ優一側に落度があるので、説教する側は責めやすいし、屁理屈だから論破しやすい。そこですぐに謝らないのも優一の魅力で、説教する側もさらにイライラさせられるからこそ、「お父さんはあんなに偉大なのに」「親の七光りをいいことに」という、優一を煽るような禁断の一言を言いたくなるのではないか。

 同じ二世タレントでも、元巨人軍・桑田真澄氏の子息、Matt Roseに、この芸当はできない。『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日系)に出演した際、Mattは神田伯山に「変わったメイクをしている」と言われて、黙りこんでしまっていた。どんな理由で黙ったのかは不明だが、番組は止まってしまうし、伯山がいじめたように見る人がいないとも限らず、これはよろしくないだろう。ここ最近のMattは美容界が主戦場だけに、テレビでの評判がよろしくなくてもそれでいいのだろうが、やはりどんなことでもいいから言い返す瞬発力が、バラエティー番組には必要で、優一はほかの二世タレントと比べて、この部分が突出しているように感じる。

夢でなく、使命で生きる。
花田優一はもっと笑っていいタレントだと思う
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