[コラム]K-POPタテ・ヨコ・ナナメ斬り

SEVENTEEN「HOME;RUN」は「Jazz」を知るとさらに楽しい! MVの世界観と音楽ルーツを解説 

2020/11/03 19:00
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ジャズを象徴する「ブルーノートスケール」とブルース

 アメリカ南部のミシシッピ州北西部の川で囲まれたミシシッピデルタ地帯は広大で平らで肥沃な土地があり、1800年代後半たくさんの大規模農園が作られ、奴隷制から解放されたアフリカンアメリカンたちが誘い込まれて小作制が始まりました。アフリカンアメリカンは奴隷制から解放されたとはいえ、農園主のヨーロッパ人から金を借りる代わりに生産物の半分を差し出させられ、農園に縛り付けられます。そこで過酷な労働を強いられた彼らが怒りや苦悩、不満といった自らの感情を表現する手段として用いた音楽が1890年代ブルースへと発展します。

 ブルース登場以前は、土地を掘り返したり船を漕いだりするような、大勢が一斉にリズミカルな作業をする場で掛け声的に歌われた労働歌(ワーク・ソング)、農園で集団で仕事をしながら歌っていたフィールドハラー、誰かが歌うと誰かがそれに答えて歌うというコールアンドレスポンスなどがありましたが、ブルースはそれとは対象的に、仕事をしていない暇な時、身近な出来事や個人的なこと、感情などを独白的にしゃべって歌うというイメージのものです。

 彼らにとって身近だったギターが伴奏楽器として適していたこともあり、初期のブルースはギターの弾き語り形式のものがほとんどでした。1900年代に入るとブルースは楽譜に落とし込まれ、1920年代に入り初めてのブルース楽曲がレコーディングされます。その後、形式上奴隷から解放されたアフリカンアメリカンは季節労働者としてミシシッピ河口からアーカンソー、ルイジアナ、テキサス、テネシーなどを常に移動しました。ブルースのミュージシャンたちも例外ではなく、アメリカ南部地域を旅してブルースを広めました。

 メロディーに独特の節回しがあり、一般にブルーノートスケールと呼ばれている5音階(ペンタトニック・スケール)で演奏されます。

 長調でいうドレミファソラシドの3・5・7度(ミ・ソ・シ)の音をフラットさせて作った音階で、3度の音はメロディが長調的か短調的になるかを決定する部分ですが、ここがフラットすることで短調的になり少し悲しい響きに聞こえるというものです。このブルーノートスケールはジャズに大きく影響を与えており、1939年にはドイツでジャズ専門の「ブルーノート・レコード」というレコードレーベルができるほどで、ブルーノートはジャズを象徴するキーワードとなっていきます。

 1900年代前半はまだレコードというメディア自体が存在せず、音楽は生演奏をその場で楽しむものでした。1920年代に録音技術が発達し、レコーディングができるようになってから過去発表された楽曲が録音されることも多く、下記に紹介する楽曲もカッコ内に記載したリリース年と実際の楽曲ができた時期が合わないものが多いです。

■Charley Patton – Mean Black Cat Blues (1929)

■Robert Johnson – Kind Hearted Woman Blues (1936)

 Robert Johnsonは伝説的なブルース歌手兼ギタリストで、彼をモデルにした「俺と悪魔のブルーズ」という漫画が出版されており、私の大好きな作品です。

演奏スタイル「ラグタイム」の台頭 〜歓楽街の酒場で人気を博す

 時を同じくしてミズリー州ダリアやセントルイスでは、アフリカンアメリカンがピアノ演奏を中心に、自らのルーツ音楽を基本とするシンコペーションを多用したメロディー(右手)と、マーチ音楽や行進曲に起因する2拍子の伴奏(左手)を融合させた独特の演奏スタイルの「ラグタイム」が台頭します。シンコペーションとはリズムの拍の頭を短くし、裏拍を長くしたりアクセントを置き跳躍感を得る手法のことで、均等な4拍に対して「タタータ、タタータ」のようにリズムを取ることでグルーヴが生まれます。

 最初はピアノ用の楽譜として登場しそれ通りに弾くものでしたが、今までの西洋音楽(クラシック音楽)のリズムとは違う、軽快なピアノタッチと「ずれた」(Ragged)主旋律が特徴です。恐らく誰でも聞いたことがあるであろうこの曲の動画を見てもらえれば、先程の説明の「右手」と「左手」の意味がわかるかと思います。

■Scott Joplin – The Entertainer (1902)

 1900年初頭のニューオリンズでは、歓楽街でもあった売春地区・ストーリーヴィルの酒場やダンスホールでラグタイムが人気となり、アフリカンアメリカンもトランペット、トロンボーン、クラリネットといった西洋楽器を使ったマーチングバンドによる街頭演奏を行うようになっていました。「Maple Leaf Rag」は大ヒットとなり、アメリカ全土で人種や性別、身分などに関わらずたくさんの人がラグタイム曲を作曲しました。

■Scott Joplin – Maple Leaf Rag (1899)

SEVENTEEN / ;SEMICOLON (スペシャルアルバム) (14種から1種ランダム発送)[韓国 CD]
こんなに楽しいジャズ解説は後にも先にもないよ!
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