[コラム]K-POPタテ・ヨコ・ナナメ斬り

SEVENTEEN「HOME;RUN」は「Jazz」を知るとさらに楽しい! MVの世界観と音楽ルーツを解説 

2020/11/03 19:00
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もう一つの「スウィング」

 1930年中頃には「ジャズ」という言葉は「アフリカンアメリカのやるジャズ」を指すようになっていたので、白人たちはもともと売春宿から生まれたジャズといういかがわしい生い立ちの音楽を、自分たちの「上品なもの」にしようとし、ジャズを別の呼び方にしようと考えました。そうして選ばれた言葉が「スウィング」です。ジャズはこの頃、「ノリ」のことや演奏スタイル一部分ではなくジャンル全体を指す意味で「スウィング」、「スウィング・ミュージック」と呼ばれるようになりました。

 白人たちは、「スウィング」をアメリカの象徴の音楽として仕立てました。「スウィング」は、いわゆる「表」のジャズの形であり、その頃、ハーレムを中心としたアフリカンアメリカンたちの「ジャズ」は、「裏」のジャズとして発展していきました。そうして出現したのが「ビバップ」というジャズの演奏スタイルで、それから「モダン・ジャズ」と呼ばれるジャズが誕生することになります。

 ジャズに関連する映画はたくさんありますが、1930年代のニューヨークを舞台にした『ギター弾きの恋』(Amazon prime videoで視聴可能)や、ニューオーリンズで生まれ、シカゴ、ニューヨークと移動しながら活動を続けてきたルイ・アームストロングなどが出演した1958年のジャズフェスティバルを取り上げた『真夏の夜のジャズ』という映画がちょうど上映中です。終映してしまったところも多いですが、近くで見られそうな方は是非見てみてください。

「HOME;RUN」MVに見える「野球」「ミュージカル」

 Seventeenの「HOME;RUN」MVに要素が見える「野球」や「ミュージカル」の観点から、ジャズと絡めて少しだけアメリカの歴史を見たいと思います。
 
 1800年代後半にアメリカで野球が生まれ、現在のメジャーリーグは1903年に発足します。1920年にはベーブ・ルースが活躍し、戦時中や世界恐慌時に人気が下火になることもありますが、ジャズと時を同じくしてアメリカ全土で人気を博します。戦時中の人手不足があっても、アフリカンアメリカンはメジャーリーグへの出場は認められませんが、1947年にジャッキー・ロビンソンが初めてのアフリカンアメリカンのメジャーリーガーとして登場。彼が大活躍したことでアフリカンアメリカンの選手を雇う球団が増え、さらにはCount Basieによる「Did You See Jackie Robinson Hit That Ball?」というジャズ楽曲まで作られます。「HOME;RUN」の楽曲で、ジャズの「スウィング」と野球の「スウィング」がかかっていることがわかりますね。

■Count Basie & His Orchestra – Did You See Jackie Robinson Hit That Ball? (1947)

 ミュージカルスタイルの作品が上映されるようになったのは1850年頃からで、1880年代にオペラハウスがブロードウェイに登場したことをきっかけにミュージカルの劇場街が形成され始めたといわれています。

 1900年代に入るとブロードウェイに劇場が立て続けに建設され、1940年代半ばの第二次世界大戦中はブロードウェイ第1次黄金期とも言われ、ミュージカルが活発に上映されます。ミュージカルで演奏される楽曲がジャズへと引用されることも多く、ジャズのスタンダード・ナンバー(定番曲)だと思っていたものがミュージカル出身の曲だったということも珍しくありません。

 ミュージカル楽曲はミュージカル作品のために書かれているため、特定のアーティストのイメージが付きにくく、引用してジャズの楽曲としてアレンジしやすいというのもあるでしょう。日本でもCMなどに使われているため知っている方も多いであろう下記の曲は、1959年に上映されたミュージカル「The Sound of Music」の挿入歌です。

■John Coltrane – My Favorite Things (1965)

SEVENTEEN / ;SEMICOLON (スペシャルアルバム) (14種から1種ランダム発送)[韓国 CD]
こんなに楽しいジャズ解説は後にも先にもないよ!
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