オンナ万引きGメン日誌

万引きGメンがつい反応する「エコバッグの持ち方がおかしな人」……デカいバッグで高級品を盗みまくる、居酒屋店主の呆れた手口

2020/09/26 16:00
澄江(保安員)
写真ACからの写真

 こんにちは、保安員の澄江です。

 レジ袋有料化に伴うエコバッグ利用者の増加と、新型コロナウイルス流行によるマスクや帽子の着用率上昇に伴い、食品スーパーの店内は、一見して不審者だらけといった様相を見せています。商店側も危機感を持たれているようで、ここのところ新規依頼が急増しており、一部お断りするまでの状況にまでなりました。同様に、防犯機器のリニューアルを進める商店も目立ち、まず手始めにと、エコバッグの利用方法などの買い物マナーを啓発するポスターを貼り出す商店も増えています。

 その内容を見れば、万引き防止の観点から言っているもので、お客さん側に「疑われない努力」を求める内容になっていました。足を止めて読み込んでいる方も数人見かけたので、過去にあった草野仁さんが上段に竹刀を構えて「万引きは犯罪です」と訴えるポスターや、警察官に扮した南明奈さんが「万引きの罪はオッキーナ」と微笑むポスターなどと違い、多少の啓発効果は見込めるのかもしれません。しかしながら現場の実態は、まだまだそれが反映された状況になく、なにも気にしていないと思われる方々ばかりが目立ちます。職業柄、仕方のないことなのですが、エコバッグなどの持ち方がおかしい人を見ると、つい反応してしまうのです。

 近頃は、レジ袋を断る形で商品を持ち帰る人が増えており、そうした状況に紛れて、堂々と商品を持ち出す被疑者も急増しています。マイカゴに商品を詰めて、そのまま持ち出すカゴヌケの手口による犯行も目立ち、社会状況の変化によって万引きがやりやすくなってしまったことは否めません。万引き被害が急増した古書店が、エコバックの店内への持ち込みを禁止する一方、客を疑いたくないと、環境にやさしいバイオマスの袋を無料で頒布し続けるスーパーも存在しています。防止対策の正解は見当たらず、保安員の目というアナログな武器で立ち向かうほかない状況と言えるでしょう。今回は、コロナ禍の食品専門スーパーで捕らえた居酒屋店主について、お話ししていきたいと思います。

 当日の現場は、東京近郊にある食品スーパーS。私鉄沿線のターミナル駅前に位置する老舗店舗で、土地柄なのか、比較的若い世代の人たちが目立つお店です。このお店での勤務は、この日が初めてのこと。少し早めに到着したので、店長に挨拶する前に比較的小さめの店内を一周してみると、万引き犯が集まりそうな典型的な死角を見つけて気になりました。

(やる人は、ここで入れるだろう)

 周囲に気付かれぬよう、死角への視界を確保する作業をしてから、いそいそと事務所に向かいます。

「おはようございます。店内保安です」
「おはようございます。あなたの思った通り、おかしな人は、みんなあそこに入っていきます。ベテランさんのようで安心しましたよ。よろしくお願いしますね」

 どことなく松村邦洋さんに似ている店長に挨拶をすると、防犯カメラのモニターで私の様子を見られていたようで、少し恥ずかしい気持ちで巡回を始めることになりました。

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「盗まれた活鮑」の様子が目に浮かぶわ
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