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リアルナンパアカデミー塾長「女は同意していた」の言い分

2020/03/26 20:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 女性に酒を飲ませ、酩酊状態にさせたうえ性交した罪に問われていたナンパ塾・リアルナンパアカデミー(以下RNA)塾長、渡部被告。以下3件の準強制性交等罪で起訴されていた。

 2017年11月13日に東京都内のホテル一室において、塾生だった元会社員・大瀧真輝と共謀の上、飲酒酩酊し抗拒不能となったAさんと性交したという「Aさん事件」。2018年3月2日、大阪ハウスにおいて、塾生だった歯科医師のS(不起訴)と会社役員のG(同)らとナンパをしたCさんに飲酒酩酊させ抗拒不能な状態に陥らせて性交したという「Cさん事件」。同年3月10日、元塾生の元世田谷区職員・根津天亮、ブランド販売会社の役員吉岡新一郎らと、都内のハウスにおいて飲酒酩酊し抗拒不能となったBさんと性交したという「Bさん事件」だ。

 いずれの事件においても渡部被告は「共犯と共謀した事実はなく、女性は飲酒したが抗拒不能になった事実はない。また抗拒不能な状態であったという認識もありませんでした」と無罪を主張した。

 冒頭陳述によれば渡部被告は2008年ごろにRNAを立ち上げ、塾長としてナンパした女性と性交する方法を指導したり、塾生らと性交人数を競い合うほか、ナンパの成果をRNAのグループLINEに投稿するよう塾生らに指示し、共有しあっていた。指導していた手口は、女性をナンパしたのち、ゲームを持ちかけ、負けると度数の強い酒を一気飲みするよう促し、酩酊させたのちに性交に及ぶ、というものである。

 冒頭陳述等によれば2017年11月13日の深夜、新宿区内で大瀧とともにAさんに声かけを行い、断られても繰り返し誘った。Aさんがナンパに応じると、大瀧とともに居酒屋へ行き、しばらく飲んだのち、ダーツゲームを持ちかけ、同区内のホテル地下にあるダーツバーへ移動した。

 ダーツバーではマニュアル通り、ゲームに負けるとテキーラを一気飲みするルールを設定。これにより酩酊したAさんをホテル客室へ連れてゆき、さらにトランプゲームを持ちかける。負けるとワインクーラーというカクテルを一気飲みする設定だった。ゲームに負けたAさんにさらに飲むよう持ちかけた。Aさんは5回負け、その都度一気飲みさせられ、最終的にトイレで嘔吐したのち動くこともできなくなった。大瀧の報告によりAさんの状態を認識したであろう渡部被告は、大瀧に「洗面所に移動」するよう指示し、自分はAさんをベッドに引きずり、性交したという。この際、渡部被告は動画を撮影していた。

 証人出廷したAさんは、普段はナンパに応じることはなかったが事件の日は少し事情が違っていたと述べた。「当時付き合ってた彼氏と喧嘩して、その前にも友人と飲んでたんですが、喋り足りない気持ちだったので、まあいいかなと」思ったのだそうだ。傍聴席や渡部被告からその姿が見えないように置かれた衝立の奥から、細々と語る。

「被告人からベッドに放り投げられたあと、ストッキングを脱がされて……おそらく、やられてしまったのかなと思いました。すごく具合が悪かったのですが、自分が元気だったら、意地でも逃げたいという気持ちでした……その後はほぼ覚えてないです。気づいたら、大瀧の顔が目の前にありました。記憶がかなり曖昧ですが、そのときも、やられてしまった状況になると思う」

 事件後は塞ぎこみ、メンタルクリニックなどに通っていたという。

「まあ、かなり今回のことショック……ショックすぎて相談できず、話すらできなくて、結構落ち込んでしまっていました。何回も……夜寝る前とか、何も考えない時間帯に思い出しました。ショックというか、最悪というか、私的にはダメージが大きかったのでずっと引きずる状況でした。でも自分自身の過ちだと思っていたので、警察に相談しようという気持ちは正直なかったです。酒は飲まされていましたが、飲んで潰れた自分が悪いと思っていました」

 このように、思い出したくない日のことを法廷で証言したAさんに、弁護人は禁じ手を使った。

 一連の事件では被害者の情報を秘匿する決定がなされており、法廷でその名前や住居など個人の特定につながる情報は公にしないことになっていた。ところが、質問者が弁護人に交代すると、Aさんの職業を明かしたのである。

 これ以降、Aさんは質問に答えられずすすり泣く声が聞こえてきた。同様により一旦休廷となったが、尋問が再開しても「ワインクーラーのワインとオレンジジュースの割合はどれくらいか」「ワインクーラーを湯飲みに注がれる時こぼしてはいないか」など、酒量が本当は多くないのではないかという見立てに基づいた質問が続いた。

 ほか2つの事件でも同じように被害者が証人出廷し、当時の様子を語った。性交までの流れはいずれも大筋が全く同じで、ナンパしたのち場所を移し、ゲームを持ちかけ、負けたら一気飲みというルールを設定する。その後イカサマを用いて多量に飲酒させられた被害者らと性交に及ぶというものだ。

 しかし被告人質問で渡部被告は、こうした関係者証言を否定した。

 まずRNAでは女性を抗拒不能にさせての性行為は法律違反だと指導していたと主張。またゲームも「テキストベースの教材で、泥酔させないように、あくまでも場を盛り上げることがメインだと指導していました」と抗弁した。塾生らが女性に飲ませすぎていれば「個別にLINEで指導していました」ともいう。性交動画の撮影、保存についても「冤罪で有罪にならないように、一部始終を動画で撮るように指導していましたし私もそうしていました」と、あくまでも自分たちの身を守る目的のもと、撮影を行なっていたに過ぎないと述べた。

 渡部被告は女性たちを「Aさん」「Bさん」ではなく「女A」「女B」などと呼びながら、すさまじい早口ですらすらと語り続ける。

「女Aに性行為しようというと同意しました。キスをして舌を絡め、胸や性器をさわり、ワンピースを脱がせました。ストッキングを脱がせる時、女Aに『一瞬腰浮かせて』というと協力して浮かせ、ストッキングを脱がせてからコンドームをつけて挿入しました」

「女Bはベッドに入ると一分も経たないうち覆いかぶさってキスしてきました。そして私の性器をさわり『エッチしたい』と言ったので確実に性行為できると思いました。エッチしたいと言い自分で脱いだので性行為したがっていて同意があると思いました」

「女Cの友人は全然可愛くなく、会話を盛り上げるのが面倒なのでゲームを提案しました。(中略)友人とテキーラを飲んでいるとき、何度注意してもベタベタしてキスしてきたりするので、チームを替えて、私と女C、塾生の沢田と友人というペアになりました。数分話してると女Cはトイレに行きたいと言うので案内し、トイレから出てくると女Cは抱きついてきました。Cにキスして『エッチする?』と聞くと女Cは頷いたので、じゃあこっちに行こうと寝室のドアを開けて2人で入り、ベッドの上に座り、性行為しようと服を脱がせました」

 いずれの女性たちも、性交に至るまで意識はあり、性交に同意する言動、もしくは自ら誘ったのだと渡部被告は繰り返した。だが、すでに塾生らが犯行を認め、有罪となっているなか、彼のこうした証言を裏付けるような証拠は見当たらない。それでも渡部被告は完全否認、無罪の主張を最後まで変えなかった。

 Bさんは意見陳述で、渡部被告の言い分に疑問を呈している。

「ナンパ師だと言っているわりに、女性の気持ちをわかっていない。被告人は、私が覆いかぶさって『エッチしたい』と言ったなどと言いました。しかし被告人は、クラブで声をかけて解散するまでの音声を録っていました。動画も撮っていました。『冤罪に巻き込まれないように』と言っていましたが、なぜ大切な“私が覆いかぶさって『エッチしたい』と言った”場面の証拠がないのでしょうか?

 他の共犯者の尋問でわかりましたが、私は事件の日、自分が思っていたよりたくさん飲まされていました。また被告人は事件の日の動画を消さないと言っており、不安が続いています。そして裁判ではAさん、Bさんではなく『女A』、『女B』と呼ぶ……見下しているように……その一方で『ナンパしたら必ず女がセックスしたくなる』などと言っており、ナルシスト過ぎて気持ちが悪くなります」

 こうした陳述もあったうえ、懲役14年を求刑されたのちの最終陳述でも、渡部被告は自身のスタイルを崩すことはなかった。

「女Aについて、タクシーで帰れば帰れたはず。一般常識的にセックスの同意があると考えるのは当然。女Aは非常識。女Bもその友人も嘘だらけ。口裏合わせの供述をしている。性的欲求、意思に基づき、セックスしたと考えるのが合理的……」

 Cさんについての陳述は省略し、最後にどうしても言いたいことがあれば言うように裁判長に命じられた渡部被告は、最後にこうきっぱりと言った。

「被害者のふりをして嘘の話をする人間を信用し、冤罪の判決を出している。明らかに真実でない話をしている人間を信用することなく、公正な判決を下されることを望みます」

 3月12日の判決では、彼の望みは叶うことはなく、Aさんたち被害者、共犯らの証言から被害者が「抗拒不能」な状態にあり、渡部被告はそれに乗じて性交したと東京地裁は認定した。

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最終更新:2020/03/26 20:04
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