暮らし
[連載]白央篤司の「食本書評」

『まいにち湯豆腐』書評:「ラクを優先派」から「探求心強め」まで幅広いタイプを満足させるバリエーション

2020/02/06 12:00
白央篤司

下記の写真含め、調理・撮影=白央篤司

  「トマトと豆腐のチーズ湯豆腐」、豆腐がここまでパンに合うような味わいになるとは。白ワインが欲しくなったなあ。

 最初に切った豆腐を塩でからめるのだが、これは一緒に煮る「トマトやチーズと(味を)なじみやすく」するため、と説明される。豆腐自体の味つけじゃなく、全体をなじませるためなんだな。パセリがあるとないでは味のしまりが段違い。これだけのためにパセリを購入するのをためらう人もあるだろうが、余った分は細かく刻んで冷凍すればひと月はゆうに薬味として使えますよ。

 もう一品、「ピリ辛納豆湯豆腐」もうちの定番になりそう。ひきわり納豆とニラで豆腐を煮るもの。コクが出るものだなあ、納豆といえばそのまま食べることがほとんど。活用レシピが欲しかったので、ありがたい。かすかなぬめり感が豆腐を包んで、塩気は強くないのに満足度高し。ごはんのおかずにぴったり!

 「もっとラクなレシピはない?」という人のためだろう、巻末にはレンチンでOKの冷奴ならぬ温奴の作り方が11品あるのもうれしい。ツナ缶やハムなどのすぐ使える食材と調味料だけでひと皿に。「コンロを使わず作れるレシピがほしい」というのも、現代における強いニーズのひとつだ。

 ラクも考えつつ、料理探究心を刺激し、それなりの「作りがい」も同時に満たしてくれる。小田真規子イズム、これにあり。

白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『 自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。

 

最終更新:2020/02/06 12:00
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