インタビュー

山口組、住吉会も「タピオカドリンク」参入! ブームをシノギにするヤクザの“次なる資金源”は?

2020/01/11 18:00
安楽由紀子

みかじめ料はもう取れない!? 漫画の世界とは違うヤクザのシノギ

――暴力団のシノギというと、売春や土地転がしで莫大な金を稼いでいるイメージが強いです。しかし、暴排条例(暴力団排除条例)で昔のように派手にお金を動かせなくなったので、タピオカドリンクで地道に稼いでいるということはありますか。

鈴木 それはないですね。先ほども言ったように、タピオカドリンク店は数ある投資の一つ。自分たちで営業しているわけではなく、あくまで出資しているだけなんです。土地は儲かるけど、土地転がしにはスキルがいるので、専門の暴力団しかできない。はした金を持って新規参入してきた暴力団には儲けられないんですよ。

――暴力団は、いわゆるチケット転売で儲けている印象もあります。いわゆる「ダフ屋」ですね。しかし最近、デジタルチケットが普及し始めて転売が難しくなり、稼げなくなっているのではないかなと思うのですが。

鈴木 ダフ屋は、ダブ屋を専門とする姉ヶ崎一家が一手にさばいています。姉ヶ崎一家は指定暴力団ではないので、規制は緩いから、ダフ屋は続くだろうね。ただ、やはりデジタルチケットが普及すると厳しい。以前と比べて数は減ってきていると思います。

――みかじめ料を資金源にしているというのもよく聞きます。例えば、スナック経営者にみかじめ料を要求して、お金をむしり取っていくようなイメージがあるのですが。

鈴木 それは漫画の世界の話。暴力団に聞くと、今はみかじめ料はほとんどないと言います。実際の犯罪検挙数では多いかもしれないけれど、特に都会ではもう取れないですね。みかじめ料を取る基準は、女を使っている商売かどうか。デリバリーヘルスなど、女を使った商売には暴力団がやって来ます。でも、2005年の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)改正により、違反の罰則が強化され、開業する際は公安委員会に営業届を出し、届出確認書を店に備えなければいけないなど、厳しくなった。すなわち、きちんと営業している店は警察が付いているので、暴力団はみかじめ料が取れなくなったわけです。

 ヤクザがみかじめ料を取るとしたら、本番をウリにしているデリバリーヘルスなど、非合法の商売。暴力団が来ても警察に駆け込めないから、そこにつけ込んで取る。オレオレ詐欺なんかも、暴力団が直接やっているわけではなく、「やっている連中は警察に駆け込めない」というところにつけ込んで、上前を取っているんですよ。

――想像上のヤクザのシノギと、実際のシノギは事情が異なるなと思いました。

鈴木 古典的なシノギは売春、賭博、覚醒剤といった非合法なことだけど、本当は暴力団も合法の仕事をしたいと思っています。捕まるリスクがないから。だけど暴排条例で、彼らは銀行口座を持てないし、カタギと付き合ったらカタギが罰せられる。表立って合法な事業ができないんです。だから非合法の仕事か、タピオカドリンク店への投資など、隠れて合法なことをやるしかない。暴力団がタピオカドリンク店を経営して何も悪いことはないはずなんですけどね。誰かを脅しているわけじゃないし。でも警察は「暴力団の資金源になる」といって潰しに来る。正直、おかしな話ですよ。ただ、ヤクザはよくこうやって言っています。「朝、満員電車に乗ることもなく、昼に起きて、喫茶店でゆっくり飯を食べて、夕方から飲んで稼いでるのだから、カタギからやり玉に挙げられるのは仕方がない」ってね。

――最近のヤクザは以前より丸くなったと思わされる一方、現在も暴力団の抗争のニュースを目にします。

鈴木 抗争は世間に対するアピール、いわば彼らのステージなんですよ。抗争で強かった組に、人とカネが集まる。逆に負けっぱなしだと集まらない。暴力団に近づくカタギの奴らは、「暴力団は怖い、でも僕らにはやさしい」という“ギャップ萌え”をするものですから、暴力団は派手な抗争をして殺し合い、強いところを見せないとならないわけです。しかし、だんだんそれもなくなってきましたね。漫画やヤクザ映画と違って、殺しのカードはそんなに切れない。殺したあとが大変だから。山口組もドンパチやってるけど、やり足りなくて、いままで築いてきた山口組の強いイメージの貯金が減ってきているように思います。

教養としてのヤクザ
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