インタビュー

山口組、住吉会も「タピオカドリンク」参入! ブームをシノギにするヤクザの“次なる資金源”は?

2020/01/11 18:00
安楽由紀子

 2018~19年にかけて大流行した「タピオカドリンク」が、暴力団の新たな資金源になっている!? そんな衝撃的な事実を明らかにした『教養としてのヤクザ』(19年10月発売/小学館新書/溝口敦、鈴木智彦共著)。著者の1人である暴力団事情に詳しいフリーライターの鈴木智彦は、タピオカドリンク店が暴力団のフロント企業になっていると指摘し、そのカラクリを紹介している。ヤクザが流行をメシの種にしているという事実は世間にはあまり知られていないが、一体なぜ暴力団はタピオカドリンクに目を付けたのか。ほかにも、私たちの身近なところに資金源はあるのだろうか。

タピオカ記事が大反響、呉の組員から電話が……

――『教養としてのヤクザ』上梓の前、2019年6月にニュースサイト「NEWSポストセブン」に、鈴木氏による「タピオカがヤクザの資金源に 『こんなに楽な商売はない』」という記事が掲載されました。この記事には、暴力団幹部は中国や業務用スーパーから激安のタピオカを仕入れ、スーパーの安い茶葉を使用してミルクティーを作り、原価1割ほどで1杯約500円を販売。1店舗で月に80~100万円ほどの利益をあげていると書かれており、同記事はネット上で大反響を呼びました。

鈴木智彦(以下、鈴木) そもそもこの「ヤクザとタピオカ」の企画は、平成生まれの若い担当編集者が、毎週行われているプラン会議で、裏取りをしないまま苦し紛れに出したものだったんですよ。「ヤクザとタピオカ」という意外性と、語感で思いついたのだと思います。俺は最初「暴力団がタピオカドリンク店をやっているなんて、そんなことあるわけない」と断った。もともとシノギの取材にはあまり興味がなくて、専門としているのは殺しだから。だけど、その編集者が独自に調査して山口組系のタピオカドリンク店を見つけてきたんです。そうなったら、こっちも燃えるじゃないですか(笑)。調べてみたら、都内に住吉会系の店もあることがわかった。だから、着眼点自体は編集者のものなんです。

『教養としてのヤクザ』(小学館新書)

 それで、まずこの記事が「週刊ポスト」(小学館)に掲載され、その後、ネットでも配信されたのですが、「すごいPVになっている」と編集部が騒ぎ出した。ネットの影響力はすごいですね。20年ほど前に取材した呉(広島県)の若い衆から「記事を見た」と連絡が来たし、昔から露店でタピオカドリンクを出していたテキ屋からも「こういうことを書くと商売が面倒くさくなるから、これ以上書かないで」なんて連絡も来たので、びっくりしたね。これが「バズる」ということかと。

――『教養としてのヤクザ』によるとカカオも資金源になっているそうですね。

鈴木 暴力団は、いろんなところに投資をしているんですよ。仮に投資先が事業に失敗しても、「返せ」と脅せるから、さまざまなところに投資できる。タピオカはそのうちの一つにすぎません。タピオカは暴力団の参入にぴったりだった。作るのにスキルがいらない、従業員はアルバイトでいい、店は狭くていい……その上、タピオカは激安。タピオカよりミルクティーの方が高くつくので、タピオカを無料で増量して、ミルクティーを減らすと、「お客さんは喜び、店は儲かる」と言っていましたよ。

 カカオはバレンタインデーの1カ月くらい前に急に値段が上がる。賞味期限切れのカカオを安く買い集めて、シンガポールの倉庫に置いておき、バレンタイン前に「新しいカカオ」として輸入販売して儲けるというのが3年ほど前にはやったんです。目のつけどころがすごい。

教養としてのヤクザ
「タピオカヤクザ」の語感もいいね
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