インタビュー

山口組、住吉会も「タピオカドリンク」参入! ブームをシノギにするヤクザの“次なる資金源”は?

2020/01/11 18:00
安楽由紀子

あなたの町にもいる、身近なヤクザ

―― 一般的には、自分たちの身近なところに暴力団が絡んでいると想像できません。「タピオカドリンク店がヤクザの資金源になっている」という記事が反響を呼んだのも、「まさかそんなことが」と驚いた人が多かったからではないでしょうか。

鈴木 結構身近にいるんだけど、みなさんが気づかないだけ。とあるホテルのラウンジに行ったら、若い衆がたくさんいたことがあったんですが、誰も気づかない。街でヤクザの集団が歩いてきても、誰も気づかない(笑)。最近は、柄シャツの襟をジャケットの表に出しているような漫画みたいなヤクザはいないんですが、佇まいが明らかに一般人と違います。ファッション関係者に言わせると、装飾品から着こなしから全て一般人とは違うそうですよ。

 俺は、暴力団は差別と似ていると思う。差別は表出すると批判されるが消えることはない。暴力団も、叩かれて表から見えないかもしれないが、消えてはいませんから。

――ちなみに、芸能人とのつながりも深いと言われますね。

鈴木 もともと興行が暴力団のシノギ。昔は暴力団が芸能プロを経営していましたからね。その名残で、今でもつながりは深いんです。暴排条例の前は、芸能人とヤクザが一緒に食事することも当たり前のようにありましたよ。Vシネマも、「自分たちの組の歴史を作品にしている」と言って、該当する組が出資を行っていましたしね。あと、売れなくなって辞めたタレント……例えばジャニーズ事務所の元アイドルなんかも、暴力団やその周辺がお金をくれるから寄ってくる。それにヤクザは一緒に遊ぶには最高に面白い。組織人なので、空気を読んで場を盛り上げてくれるんです。

 一方で、暴力団側も芸能人を広告塔や箔付けに使おうとします。「芸能人と食事した」と言うと、それだけで寄って来るカタギも増えるから。ヤクザと芸能人は持ちつ持たれつの関係なんです。ただ、芸能人は今、ヤクザと写真を撮られることに非常に敏感になっている。流出して「反社会的勢力と交流がある」と報じられたらアウトなのでね。

――時代によって変わりつつあるヤクザの現状を知れましたが、今後、ヤクザはどうなっていくのでしょうか。

鈴木 ヤクザの強さは親分・子分の濃密な絆。昔は、一家は家族、若い衆は子分、すなわち子どものような存在だった。しかし、それが今では薄れてきたように思います。山口組の組員は1万数千人いて、いわば会社の上司と部下と同じようなもので、つながりが弱くなっている。暴力団というのは、昭和から平成にかけて巨大化していきましたが、このスタイルでは今の厳しい取り締まりの荒波に耐えられないのではないでしょうか。組織を縮小して親分の目が届く40~50人の組織に戻っていかざるを得ないと感じていますね。

鈴木智彦(すずき・ともひこ)
1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌「実話時代」(三和出版)編集部に入社し、「実話時代BULL」編集長を務めた後、フリーライターに。暴力団に関する潜入ルポで広く知られる。著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』(ともに文藝春秋)『サカナとヤクザ』(小学館)などがある。

【著書紹介】
教養としてのヤクザ』(小学館新書/溝口敦、鈴木智彦共著)
日本の二大“ヤクザライター”である溝口敦と鈴木智彦が集結。「ヤクザとメディア」「ヤクザと食品」「ヤクザと五輪」「ヤクザと選挙」「ヤクザと教育」「ヤクザと法律」といったテーマで、ヤクザの知られざる実態を暴いていく。“反社会学”の入門書的一冊。

最終更新:2020/01/11 18:00
教養としてのヤクザ
「タピオカヤクザ」の語感もいいね
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