年末企画

【米エンタメ2019年総決算】2019年はボディポジティブで稼いだセレブ、来年は環境系ビジネスに注目!?【渡辺志保×辰巳JUNK対談(中)】

2019/12/26 18:00
小島かほり

業界の構造を変える!? アーティストの権利拡大

どうしても原盤権がほしいテイラー

――今年は、テイラー・スウィフトが自曲の原盤権をめぐって、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデを手掛ける敏腕マネジャー、スクーター・ブラウン率いるレーベル側とのいざこざをSNSで暴露しました(※1)。アーティスト側が権利をどうコントロールするかというのも、今後音楽業界の構造を変えるような大きな変化だと思いますが。

辰巳 リル・ナズ・Xやリル・パンプらのように、レーベルとの契約前にもうサウンドクラウドとかで売れている人が出てきて、契約条件を交渉している人が多いらしいです。やっぱり人気のあるアーティストの権利は拡大傾向にあるのかな。

渡辺 そうですね、今後アーティストがいろんな権利を自分で所有して、ビジネスをどんどん切り拓いていく時代になるのは間違いないと思う。NLEチョッパという10代のラッパーがいるんですけど、彼も今年サウンドクラウドとかYouTubeで曲が大ヒットしたんです。メジャーからたくさんのオファーが来たんですが、何億ドルレベルの契約金を提示されても断って、エージェントを雇ってインディーズでやっていくと決断した。結局今はワーナーミュージックの傘下で自分のレーベルを作ったんですけど。

辰巳 すごい。何歳ですか?

渡辺 まだ17歳です。アメリカのヒップホップ界では、そういう動きも盛んなんです。メジャーレーベルと個人が直接契約を結ぶのではなく、自分が立ち上げたレーベルとサインをする。そのおかげで、原盤権や出版権の保有を可能にし、クリエイティブ・コントロールの主導権を握ることができる。これからは、あえてインディーでやるスタイルを貫くアーティストも増えていくだろうし、メジャー側はより柔軟な契約内容を提示できるようになってくんじゃないかな。

 最近だと、ストリーミング・サイトや他のデジタル販売サイトに自分の楽曲を登録する際に、手伝ってもらった人に対してギャラを支払う代わりに、自分で決めた売り上げのパーセンテージを自動的に分配してくれるシステムがあるんです。日本でも利用可能なものもあるんですが、煩雑な手続きとかもいらないし、面倒な送金作業もいらない。そうなるとレーベルに所属せずとも、DIYでいろんなことができちゃう。

――昔のように、シュグ・ナイトが契約をめぐって、アーティストを恫喝するといった事件はもう出てこないってことですね。

渡辺 そうですね。2017年に、レミー・マーという女性ラッパーが「ShETHER」というニッキー・ミナージュに向けたディス曲の中で「私はインディペンデント・ビッチだから、あんたと違って自分の曲の原盤を持ってるんだ」みたいな感じでディスったんですよ。「あんたの周りの男たちが、あんたの原盤権をコントロールして搾取してるんだよ」って。個人的にすごく面白いなと思って。今までは、メジャーに所属して莫大な広告費をかけてもらってアーティストとしてのし上がっていく、というのが成功パターンだったんですけど。これからは自分で権利をハンドリングして、多角的にビジネスを広げていくのが主流になっていくんじゃないかなと思いますね。でもこれは、音楽がCDじゃなくて、ストリーミング時代になったからこその流れですし。テイラーも、そのあたりの事情に敏感になってるのではと思います。

辰巳 彼女はいまユニバーサル傘下のリパブリック・レコード所属で、すごく厚遇された契約らしいんですけど。それでもまだ目指す完全形ではないのかな。

渡辺 自分のところに戻ってくるパーセンテージが全然違うと思います。あと、自分で原盤権を持っているのではなく、かつての古巣であるユニバーサル傘下のビッグ・マシーン社がそれを保有している――ということで、自分の楽曲に対して行使できる権利が全く違うのではないかな。ここ数年でストリーミングが主流になっていて、アーティストの立ち位置も変わってきてるってところなので。これからどんどん契約の仕方や内容そのものもく変わっていくと思います。

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