女のための有名人深読み週報

武井壮「若ければ若い方がいい」発言に考える、エイジズムやルッキズムがなくならない理由

2019/11/28 21:00
仁科友里

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「若ければ若い方いい」武井壮
『有田哲平と高嶋ちさ子の人生イロイロ超会議』(TBS系、11月25日)

 タレント・小島慶子の新著『仕事と子育てが大変すぎて泣いているママたちへ!』(日経BP)の発売記念として、同書にも収録されているエッセイスト・犬山紙子との対談がネットで公開された。

 「容姿や年齢にとらわれる『呪い』はもう要らない」というタイトルで、子どもを持つ母親である小島、犬山両氏が、子育てや社会の問題を正面から語っている。

 その中で小島は、「残念ながら日本の社会にはセクシズム(性別を理由に差別すること。女性、男性はこうあるべきという考え方)とエイジズム(年齢を理由にした差別をしたり偏見を持ったりすること)とルッキズム(外見至上主義。見た目による差別をすること)の3点セットが深く根を下ろしていて、そういう言葉や態度のモデルがそこら中にある」と、日本社会における差別問題に言及。

 犬山も、特に「今の社会はルッキズムとエイジズムに偏りすぎていますね」と同調する。こうした呪いを解いていくのは自分たち世代という方向に議論は展開していくのだが、そう簡単にはいかないだろうと私は感じている。

 小島は大学卒業後、TBSの女子アナとなり、写真集では水着姿も披露している。犬山は20代のとき、美人なのにオトコに振り回されるオンナたちの生態を描いた『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)でデビューし、情報番組のコメンテーターも務めている。両氏の仕事もしくは経済活動に、若さや美貌が貢献してきた部分は大きいだろう(犬山自身は「負け美女」を自称していないと言っていたが)。

 エイジズムやルッキズムの恩恵を受けてきた彼女たちが、子育てをするようになって、エイジズムやルッキズムのおかしさに気づき、「そういう社会は間違っている」と言い出すのは、理屈としては通る。しかし、若さや美をもとにのしあがってきた人が、山の頂きに立ってから「若さや美で人を判断するのはナシにしましょう」と言っても、世間に「ずいぶんと都合がいいな」と受け取られてしまいかねないのだ。

 それでは、若さや美をもとにのしあがってきていない人が「若さや美で人を判断するのはナシにしましょう」と言ったら説得力があるのかと言えば、それもまた違うだろう。「ババア、ブスのひがみだ」というふうに決めつけられて話を聞いてもらえなかったり、発言者への個人攻撃に終始する恐れもある。

 エイジズムやルッキズムをやめようと提言する人は、エイジズムやルッキズム競争の覇者であっても、敗者であってもいけない。これこそ、我々の住む世界に、いかにエイジズムやルッキズムが浸透しているかの証明と言えるだろう。

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