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樹木希林さん、「夫には遺産遺さない」報道……彼女の「一筋縄ではいかない愛し方」を考える

2019/03/28 21:00
仁科友里

夫婦の力関係は「希林>内田」という部分も?

 希林さんが亡くなった後、娘の也哉子さんが荷物の整理をしていたら、結婚1年目に内田さんが希林さんに送ったとみられるラブレターを見つけたそうだ。そこには「祐也(自分)に経済力があれば、もっとトラブルも少なくなるでしょう。俺の夢とギャンブルで高価な代償を払わせていることは、よく自覚しています」とあり、はっきり金欠を認めている。しかし、同時に「メシ、この野郎、てめぇ(という態度を取ることもあるけれど)、でも本当に愛しています」としめくくられているのだ。要約すると、「カネがなくて態度も悪くてごめんね。でも愛してるよ」となるが、希林さんは惚れた弱みで、カネがないなら私が稼ぐとばかりに、仕事や不動産投資に励み、カネを渡したのではないだろうか。

 才能はあるけれど、世渡り下手で損ばかりしている男と、男の才能を信じて耐える妻というのは芸道小説の王道だが、献身妻の与えたものが「カネ」だと考えると、少し話が違ってくるのではないだろうか。親に養ってもらっているうちは、子どもは親に逆らいづらいのと同じように、カネをもらう側は立場が弱く、支配されることと紙一重な部分があるだろう。生活の面倒を見てもらっていたというだけに、内田さんはある程度、希林さんに気を使っていただろうし、実は頼りにしていたのではないだろうか。現在の希林ブームでは、「夫が外で何をしようと文句を言わず、耐えて愛し続けた妻」という扱いになっているが、希林さんを手放すと、生活に困ってしまうのは内田さんで、夫婦の力関係は「希林>内田」という部分があったのではないかと推測する。

 カネと言えば、「女性セブン」によると、希林さんの遺産は内田さんをスキップして、娘の也哉子さんや娘婿である本木雅弘、お孫さんに相続されているという。生前、希林さんは「私が死んでも、夫に遺産は遺さない」と語っていたそうだが、内田さんの経済感覚を信用していなかったこと、また二次相続で也哉子さんが相続税に悩まされないようにするために取った対策らしい。

 けれど、それだけだろうか?

 ここにきて、内田さんの身の回りの世話をし、闘病と最期を看取った女性マネジャーがいることを「女性自身」(光文社)が報じている。あまりの親密ぶりに内縁の妻と見る人もいるようだが、希林さんは仮に愛人でも構わず、感謝しているというスタンスだったそうだ。

 いつも女性に面倒を見てもらえるのは内田さんの魅力のなせる技だろうが、もし希林さんの遺産を相続した内田さんが、この女性と結婚すると言い出したら、相続で揉め事が起きるのは目に見えている。相続税対策として、也哉子さんに直接相続させたのが第一義ではあるものの、「カネはないが、オンナが放ってはおかない」という内田さんの長所と短所を知り尽くしているからこそ、トラブルを避けるためにも、「まとまった形で与えない」という選択をしたのではないだろうか。

 内田さんにあえて遺産を相続させなかったというのは、想像の域を出ないが、希林さんが死ぬまで内田さんを愛したことは事実だろう。人からどう思われようと自分の選んだ人を激しく愛し、そのためにひたすら稼いだようにも思える。菩薩のように内田さんを許す一方で、情が激しく冷静な面もある。希林さんのすごいところは、一筋縄ではいかない愛し方を私たちに見せたことではないかと、私は思っている。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

最終更新:2019/03/28 21:00
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