北川景子ドラマ『フェイクニュース』が描くネットメディアの実情。ネットニュースは「悪」なのか?

 10月20日から2週連続で放送される、北川景子主演、野木亜紀子脚本のドラマ『フェイクニュース』(NHK)。先週の前編に続き、今夜は後編が放送される。

 『フェイクニュース』は、大手新聞社の東日本新聞社から、ニュースサイトを運営するイーストポストに出向した東雲樹(北川景子)の奮闘を描く物語。「インスタントのうどんに青虫が入っていた」というツイートを記事にするため取材を重ねていくうち、東雲は企業間の闘争や、政治の世界の暗部を目の当たりにしていく。

 野木亜紀子は脚本家になる前はドキュメンタリー制作会社でドキュメンタリーをつくっていたという。

 そんなことから「フェイクニュース」という題材には昔から興味をもっており、2012年にマスメディアの誤報などを分析する日本報道検証機構が発足してからは、日本報道検証機構が寄付をつのるクラウドファンディングに参加するなどしてきたという(2018年10月16日付「ハフポスト」掲載のインタビューより)。

ネットメディアの問題を集約した『フェイクニュース』冒頭のシーン
 そんな野木だけに『フェイクニュース』では、ネットメディアの構造的な問題点を深くえぐっている。まず、物語の冒頭からして強烈だ。

 作品は編集部の企画会議のシーンから始まる。編集部員がひとりずつこれから手がける予定の企画について編集長にプレゼンしていくのだが、そこで東雲は「今年の猛暑を路上生活者たちはどう過ごしたのか?」という記事を提案する。その記事を通して、路上生活者たちの置かれている過酷な環境や、貧困の問題に光を当てようという企画である。

 これに対し、編集長の宇佐美寛治(新井浩文)は、<そのネタでPV数稼げんのか。いつになったらやる気出してくれるんだろうな>と吐き捨てる。

 しかし、東雲も引き下がらない。<PV数はともかく必要な記事です>と、企画の社会的意義を訴えると、編集長は<取材なしでも書けんのか>と詰め寄るのである。

 取材なしで書くことができるような内容ではないため、東雲が最低でも3日は取材時間を確保する必要があると訴えると、編集長は即座に却下。<ウチはネットメディアだ。新聞のやり方じゃコスパが合わない>と、新聞記者の仕事スタイルを貫こうとする東雲を叱責し、他の企画を要求する。

 取りつく島もない編集長の反応に仕方なく、<この秋話題の女性用下着があって>と、他の企画のプレゼンを始めると、なんと最後まで聞かずともその一言で採用。編集長はまたもや<始めからそっち出せ>と吐き捨てるのであった。

 宇佐美編集長の出している空気感は若干フィクション用にデフォルメされている感もなくはないが、大なり小なりこれと似たような光景は多くのネットメディア編集部で日々繰り返されているだろう。

ネットニュースでありがちな「釣りタイトル」
 そして、東雲はこの後、「インスタントのうどんに青虫が入っていた」という、最近話題となったツイートを紹介する記事を担当することになるのだが、取材をした結果そのツイートの写真に不審な点があることや、インスタントうどんを製造した工場に立ち入り調査を実施した保健所が問題は見受けられないと結果を出したことなどを受けて、なかなか記事を書くことができずにいた。

 東雲は遊んでいたわけではなく、正確な記事を書くために取材をしていたのだが、そういったペースで仕事をすることはイーストポストの編集部では認められない。同僚から、編集長が<給料泥棒>と陰口を言っていたと知らされた東雲は、取り敢えず現状でわかっていることだけを報告する記事を書くことにした。

 青虫が混入されていたと怒る消費者の側にも、食品を製造したメーカーの側にも、どちらの側にも立たない記事であるため「青虫うどん事件に見る企業対応の難しさ」という玉虫色のタイトルをつけたのだが、これを見た編集長は激怒。東雲とは別の部下に指示して、タイトルを変更させた。その結果、「青虫うどんの真相! 愉快犯の仕業?」という、東雲が最も気をつけて避けていた方向性の記事になってしまう。

 これに気づいた東雲は<完全な釣りタイトルです。語尾に「?」をつけりゃ許されるものじゃありません>と編集長に抗議するが、しかし、そんな東雲も昔ながらのジャーナリズム精神を強くもち続けているわけではない。その記事が一晩で50万PVを稼いでいたことがわかると(彼女にとっては1カ月の累計の成績をその1本の記事で超えるような数字であるらしい)、それまで猛然と怒っていたのが一気にトーンダウンして黙ってしまう。東雲ほど硬派に新聞記者のスタイルを貫く人であっても、ネットメディアに足を置いているうち、だんだんとそちらの仕事に染まっていくのだということが、この一幕で示唆されていた。

『フェイクニュース』が炙り出したフェイクニュース以外の社会問題
 『フェイクニュース』のストーリーはジェットコースターのような展開で、次から次へと新事実が発覚していき、めまぐるしい。「フェイクニュース」以外にも、社会問題に関する言及がなされている。

 まずひとつが外国人技能実習制度の問題。外国人技能実習制度は「技能を開発途上国に伝えていく」といった社会貢献の名目で、海外からの労働者に在留資格を与える制度だが、実質的には、低賃金かつ長時間の違法な労働環境が横行しており「現代の奴隷制度」と問題視されることも多い。実際、アメリカ国務省や国連から人権侵害の状況について批判を受けている。

 『フェイクニュース』では、インスタントうどんを製造している工場で多くの外国人労働者が働いており、彼らがそのような不当な労働環境に置かれているのではないかという疑惑が出てくる。

 また、前編の最後では、外国人技能実習生を搾取して暴利を貪っているブローカーの存在が示唆されており、この問題は後編で話の核のひとつになるだろう。

 もうひとつが、日本社会における「ヘイト」の問題である。

 東雲はあることから炎上し、ネットユーザーによってプライベートを暴かれる。そして、彼女には学生時代にテコンドーの大会で優秀な成績を残していた経歴があることから「反日」「日本人から出て行け」などといったヘイトが編集部に押し寄せていた。

 この状況を見た編集長は、東雲に対し<日本人だって表明しろ><そうじゃないと、そいつらいつまでもしつこいぞ>と迫る。

 東雲は即座に<正気ですか? 差別的な人間に対して『私は日本人ですから差別しないでくれ』って、それじゃあ差別に加担するのと同じです>と主張。編集長もさすがに自分の言っていることのおかしさに自覚があるのか、<日本人だって表明しろ>との論は引っ込めるのであった。

 その日の夜、ひとりで残業する東雲のもとに、同じ編集部の同僚である網島史人(矢本悠馬)がやって来て、彼女の仕事を手伝う。

 突然の好意の理由をたずねた東雲に対し、網島は自分の母親が在日三世であることを告白。編集長にきっぱりと言ってくれた東雲に感謝を述べたうえで、<差別の話とかもう聞き飽きたっていうか>と言いつつも、<ウチに来るヘイトなリプ読むの、きついっす>と、普段は隠して仕事をしている胸のうちを明かすのであった。

ネットメディアは「悪」なのか?
 『フェイクニュース』では、ネットメディアのネガティブな側面をクローズアップしていたが、こういった負の側面は割と巷間言い尽くされていることであり、野木亜紀子が脚本を書いている以上、そんな紋切型の切り口で終わることはないだろう。

 実際、丁寧で社会的に意義のある記事づくりを主張する東雲に対し、編集長は<ウチはネットメディアだ。報道じゃない>と切り捨てるが、東雲は<いつの話よ。いまは大真面目に報道をやっているネットメディアだってあるし、新聞は読まないけどネットのニュースは見るって人も多い。報道じゃないからいい加減でいいなんて詭弁だっつうの>と、ネットメディアの役割を評価している。野木亜紀子の考えもこちらに近いのではないだろうか。

 後編では、「インスタントのうどんに青虫が入っていた」というツイート紹介企画のネットニュース記事から始まった問題が、政治家の不正を暴くところにまでつながっていくようだ。

 前編で提示された社会問題について『フェイクニュース』はどんな着地を見せるのだろうか。

(倉野尾 実)

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