【連載】オンナ万引きGメン日誌

認知症患者の万引き癖、罰金の腹いせに放尿……「老害」に悩まされるGメンの葛藤

2018/07/28 17:00

迫りくる超高齢化社会の到来が心配に

「あれ? また、この婆さんか? 交代の時に勘弁してくれよ……」

 交代の時間(大体午後3~4時くらいまで)に通報すると、警察官は露骨に嫌がります。その腹いせなのか、嫌悪感に溢れた冷たい目でSさんを睨みつけた警察官は、普段より大きな声で怒鳴りました。

「おい、婆さん。この店に来たらダメだって、何度も言ってるだろう!」
「え? 私の名前はSです。娘に電話して、迎えにこさせてください」

 大声で怒鳴る警察官に動じることなく、耳に手を当てて頓珍漢な答えを繰り出すSさんの様子は、とても滑稽で、ドリフのコントを見ているようでした。

「今日は、どうするんですか?」
「一度診断されたものは覆らないから、事件として扱えないね。何度やっても起訴されないから刑務所に行くこともないし、きっと死ぬまで治らないよ……」

 認知症の万引き常習者を前に生じる為す術のない状況を目の当たりにした私は、迫りくる超高齢化社会の到来が心配になりました。Sさんのような人に、どう対応すべきか。その答えは、見つかりそうにありません。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

最終更新:2018/08/28 11:35
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